いう印象を受けるということ。しかも,建造物のゆがみに注目し,それを扇面という曲かった地平線の構図の影靱と解釈すれば,まさにここに報告したような扇面洛中風俗図か,この屏風の成立に深く係っている可能性が指摘できよう。小林氏も先の論文の中に「いうなれば,扇面画や画帖貼付絵のような洛中名所個々の小画面を,金雲の分節機能を借りて多数,速綴合成したような印象を与えられる。」と述べられるとおりである。本報告では,その「扇面画」の具体的な作例の紹介ということになろう。つまり言えば,本報告において,狩野松栄工房の存在と,同工房における扇面と屏風の洛中名所図制作の実情の一端が推察されたのである。以上か,本報告の一応の結論である。今後は,さらに多数の室町やまと絵扇面の調査にもとづき,狩野派の初期風俗画制作におよぱした影籾の研究の必要性を強く感じる。-91 -
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