2.地理的に隔離された地にそれを求めたもの1.時間的に隔絶された時代にそれを求めたものa 古代にそれを求めたもの(アングル,シャヴァンヌ)シニャック,クロス)こうしてみると,同じ点描技法を追求した新印象派も,この主題において,スーラとは結果的に異なったヴィジョンを打ち出していたことが明らかになる。たとえばシニャックは,点描という画期的新手法を用いて,社会主義的ヴィジョンに基づいた未来の理想郷を揺いたか,それらは絵画としては結局,アングル以米の古代アルカディアを初彿とさせる伝統的ユートピア像の再生という位骰にとどまった。さもなくば,印象派と同じく,おだやかな日常の記録に甘んじたといえよう(例:レイセルベルヘ)。これに対し,スーラの位置は特殊である。先に示した図式的な分類ではスーラもまた印象派に近いことになるが,作風や様式の点からは両者は明らかに一線を圃する。それはスーラか,たんに点描法という特殊な技法にとどまらず,その略い表情や圃面構築によって,ーロに古典や伝統では説明しきれない様式を導きだしていることによる。この独特な表現形式によって彼は,全体として,ルノワールにはないような普遍性を付与した。しかもその周到に選ばれた地理的要因は,この主題が,日常に根ざしていながらルノワールのごとく日常に埋没するのを免れさせた。つまりその主題の選択は,あくまでも日常のなかにおける脱日常であり,がしかしわずかではあってもあきらかに脱日常であるがために,そこではまぎれもないユートピアが展開されることになるのである。フランスでは19世紀を通してユートピアをテーマにした絵画の多くか,代理想郷を思わせる伝統的作風を保ちつづけたといえるか,その中にあって,<グランド・ジャット島の日曜日の午後>は,特異な位置を占める作品であることか,以上の検討から導きだされた。b.未来にそれを求めたもの(パプティ,シニャック)a.古代文化の継承の地である地中海沿岸の地にそれを求めたもの(マティス,b.西洋文明と隔絶した地にそれをもとめたもの(ゴーギャン)3.同時代の身近な地にそれを見いだしたもの(ルノワール)-113
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