⑳ 鶴林寺の仏教絵画に関する調査・研究天台宗の古刹である。太子堂(国宝•もと法華堂)は,常行堂(重文)とともにのこ研究者:兵庫県立歴史博物館学芸員知念ーはじめに兵庫県加古川市に位置する刀田山鶴林寺は,聖徳太子あるいは行基の創建を伝えるるものとしては最古の遺構(1112年)であるが,この太子堂内部の来迎壁に揺かれる「九品来迎図」と「仏涅槃図」をはじめとする5件の国指定絵画(重文)は,いずれも同寺の天台浄土教,太子信仰との深い結びつきを物語っている。それらのうちには,同時代の類品に照らして内容的に際立った特徴を備えるものがあり,地方の天台系主要寺院における浄土教ほか関係絵画の伝播と受容,あるいはその独自の発展のありかたをさぐるうえで多くの問題点を含んでいると考えられる。これらの考究にあたっては,同寺に時代をおって有されるであろうその仏教絵画群を可能なかぎり悉皆的に調査し,その基本データを整理することが基礎的作業として不可欠であろうとおもわれ,ここに当面本研究の主眼をおくこととした。今回主な調査対象とした国指定物件以外の仏教絵画は,宝物館に収蔵されるもの20件余りとなった。まずこれらを便宜的に内容分類してみると以下のようなものである。.釈迦・大乗仏教関係①釈迦如米像②十六羅漢像③釈迦十六善神像1幅④仏涅槃図⑤普賢十羅刹女像1幅⑥薬師十二神将像1幅.浄土教関係⑦阿弥陀三尊来迎図1幅⑧千仏図⑨三千仏図・密教関係(祖師像含む)― 調査の概略15幅(1幅欠)1幅1幅1幅3幅理125-
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