ィヴァリーニ以外の作例に目を向けていくと,フェラーラ派のコスメ・トゥーラ,ジォヴァンニ・ベルリーニ,スキアヴォーネ,そしてピエロ・デルラ・フランチェスカなどにおけるこの主題の作品の意味がより深く理解されるだろう。おそらくこれらの作品は当時もっとも進んだ斬新な構図の画面であったのであろう。この課題をルネサンス美術全体の流れに置いてみると,15世紀の美術の動きが立体的に浮かび上がってくる。すなわち,壁画や多翼祭壇画の各々の部分は合理的空間構成の展開とともにその位置関係に強制的な変更を求められるが,意味的に結び付きが深い主題はなんらかの創意と工夫によってその連合を保持し,空間的に無理のない構図のなかに変容していくのである。クァトロチェントはこの意味において様式論とイコノロジーを相互に見据えなければその特質を見抜くことのできないもっとも魅力的な時代である。-134-
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