鹿島美術研究 年報第9号
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は陰暦7月にあたる。風景写生図が数図あり他には墨書と古画の縮図が含まれている。縮図としては酒井抱ーのものが多い。⑤ 帰都日録1巻(もと28頁)文政10年(1827)紙本墨書文政10年(1827)11月10日,田原を出立し,同月14日,小田原へ到着するまでの日記。内容は田原出立にあたっての見送りや道中の出費の覚え書きなど。⑥使相録・濫相日記稿文政4年(1821)文政4年6月28日,藩務により相模に至り,その帰りに鎌倉江の島辺りを遊歴した時の紀行。文政6年(1823)紙本墨画淡彩文政6年の絵控であるが,「藤原恨嵩像」「道春画像」「布袋像」など人物画が多くなっていることに注目される。文政5• 6年(1822• 3)頃紙本墨画淡彩縮図が大部分であるが,「濱町」と留書のある水辺風景なども含まれる。文政年間の崩山の手記は,自分の作品の絵控として残したもの(辛巳画稿,壬午図稿,癸未画稿),古画の縮図(客坐縮写,寓目録,無題縮図),紀行(使相録,溜相日記稿)と分類できる。絵控の中にも「五郎像」(辛巳画稿)などのように写生図も若干散見できる。このように縮図,絵控が残っていることから学画の様子や制作した作品の内容はほぼ知ることかできるが,日記が伝存していないことから生活については不明である。文政年間の作品としては「佐藤一斎像」(文政4年),「藤原恨窯像」(文政6年),「松崎廉堂像」(文政11年)などの人物画,「名花十友図」(文政9年)などの花鳥画がある。絵控によって知られるぼう大な花鳥画と扇面画については今日はほとんど見ることができない。こうした中にあって肖像画と「四州真景図」に見られる写実的描写は作画11.0X 338.0cm ⑦ 癸未画稿1冊(本文71紙)23. 0 x 16.4cm ⑧ 無題縮図1冊(本文38紙)22.0 x 14.Ocm -146

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