鹿島美術研究 年報第9号
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のみでなく物を客観的に見る思考をも養成したと考えられる。天保年間の手記は比較的多く残されている。そこで日記,絵控および縮図,紀行,著作と分類し,各分類の中では制作順に記すこととした。① 客坐録1冊(本文93紙)天保2年(1831)紙本墨画淡彩天保2年8月に起筆し,10月の桐生・足利への旅行にも携幣している。8月から月の足利への旅行にあっては途中目にしたことを記している。足利聖廟内の孔子像は各部の寸法を記入するなど詳細に記している。② 客参録1.|lll・(本文80紙)天保4年(1833)紙本墨圃淡彩う記事は『征参録』として『全楽旗日録』の末尾にあり,『客参録』は三河に滞在した日記である。一部には「田原城」の写生図や猪狩りの行列の全景も描かれている。③ 守困日歴1冊(34紙)天保11年(1840)紙本墨書田原蟄居中の天保11年7月1日から12月28日に至る間の日記。来客,家族の出来事など記されている。④ 客坐掌記1ill• (本文96紙)天保3年(1832)紙本墨画淡彩過眼した書圃の縮図。守景,大雅,中国画などで,「勧進能舞台図」など実景スケッチもある。さらにクモ,サソリなどの写生図もある。⑤ 客坐縮臨l lHJ-(90枚)天保3■4年(1832■33)紙本墨画淡彩3.天保年間の手記20. 0 x 13. 6cm 10月にかけての記述には中国画の縮図や池大雅の縮図,草花の写生などがあり,1019. 6 x 12. 8cm 本IIll•は『全楽堂日録』に続くもの。天保4年1月18日から28日までの三河へ向か20. 8 x 13. 0cm 19. 8 X 13. 0cm 20Xl3cm 147-

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