鹿島美術研究 年報第9号
170/428

過眼した作品の縮図と田原の風景が描かれている。⑥ 客坐録1冊(本文95紙)紙本墨画淡彩天保6年(1835)過眼した作品の縮図と備忘のメモ。⑦ 客坐掌記1冊(本文98枚)天保8年(1837)紙本墨画淡彩中国,日本の絵画の縮図。他に実景のスケッチ,蘭書目録も含まれる。⑧ 客坐掌記1冊(96枚)天保9年(1838)紙本墨画淡彩⑦と同様。⑨ 牢中縮図1巻天保10年(1839)紙本墨画天保10年(1835)5月捕えられ牢中で取調べを受けた様子を描いている。他に牢屋の図などもある。以下,紀行と著作については列記するのみとする。紀行としては「遊相日記」(天保2年,相模厚木を訪れた記録),「毛武遊記」(天保2年,毛武地方を訪れた記録),「訪且録」(天保3年,鼠尻村を訪れた記録),「参海雑志」(天保4年,渥美半島の村々や近くの島を訪れた記録)などがある。著作としては「訣舌小記,訣或問」(天保9年),「慎機論」(天保9年)などがある。以上,充分には記すことはできなかったが天保8年から9年にかけて開明思想に芽ばえ,それへの関心が広がっていったことが知られた。その思想がそのまま作品となったとは考えられず,むしろ蛮杜の嶽によって逮捕(天保10年5月)され,蟄居を命ぜられた以後にあってからこそ,その思想が絵画の中に込められているようである。今後は,これらの手記の調査研究を基にして蟄居後の作品の中にどのようにその思想が込められているか研究したい。20Xl3cm 20. 0 x 13. 6cm 20Xl3cm 23. 5 x 324. 8cm -148-

元のページ  ../index.html#170

このブックを見る