⑭ 涅槃変相図及び仏涅槃図の研究① 大阪・椒福寺,長崎•最教寺,香川・常徳寺,広島・耕三寺に伝わる諸本のグルA.圃面中に区圃線を設けないで,一つの圃面の中に涅槃の場面を中心としてその周研究者:東海学園女子短期大学専任講師渡辺里志わか国において釈諄の涅槃をテーマとする絵画は,仏伝図全体の中でも大きな部分を占めている。涅槃をテーマとする絵画には,仏涅槃図.涅槃変相図・八相涅槃図を挙げることができよう。これらのうち仏涅槃図はいうまでもなく釈諄の入滅の情景を一圃面に揺いた仏教説話画であるか,入滅の情累とその前後に起こったいくつかの事件を一圃而に描いた涅槃変相図や,仏涅槃図の左右辺に仏伝図を描き)JIlえた八相涅槃図も多く伝わっている。i星槃変相図や八相涅槃図はいくつかの作例が古くから知られているか,近年文化財調査が進み新たに発見されたものも加え十数点ほどを数え,近諸先学によるいくつかの論文か発表されその研究は進みつつある。本研究は,こうした釈尊の涅槃をテーマにした絵圃の現状を探り,中国以西の涅槃絵圃も考慰に入れつつわが国あるいは東洋の仏教美術史における位置づけを行うことを目的とする。さて,わが国には涅槃変相図あるいは八相涅槃図という興味深い作例が多く伝えられている。この二つの用語は現在いろいろな滋味で用いられるので,まず涅槃変相図あるいは八相涅槃図と呼ばれている一群の仏教説話圃を,圃而に描かれた説話の内容と場面配四法の点からいくつかの形式に分類整理したい。まず,涅槃変相図は,釈諄の入滅の‘I‘i『蚊とその前後に起こった事件のみを一圃面に描き込んだものである。「涅槃変相図」という用語を月]いるようになったのは比較的最近のことであり,中国の文献や作例にみられる陥腐変相・涅槃変相・法蔀経変相・観経変相などの変相図に対応させた結果の使用である。わが国の涅槃変相図は場而の選択と場面の配附法によっておよそ次の三つのグループ(A①,A②, B)に分類することかできる。辺に諸場而を均等に散らして配置するもの。この形式は場圃選択の違いによって次の二つのグループに分けられる。ープであり,釈諄の入滅の場面の他に,純陀供養(この解釈にはやや問題があリ,帝釈天が釈尊に舎利を請う場面とする意見もある),顕示紫金身,虚空示現,聖棺不動,聖棺巡回,迦業接足,分舎利といった諸場面が描かれる。-197
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