⑮ ティツィアーノ初期作品(■1516)について研究者:東北大学文学部助手池田ティツィアーノの初期作品をめぐる諸問題を考察するにあたり,今回の研究では,研究の対象として,『三世代の寓滋』(エディンバラ,スコットランド・ナショナル・ギャラリー)を中心に据えた。その理由として,この作品が1510年から1515年の間に制作された田図詩的寓謡圃として,『田同の奏楽』(ルーヴル美術館),『聖愛と俗愛』(ボルゲーゼ美術館),『ノリ・メ・タンゲレ』(ロンドン・ナショナル・ギャラリと,またその構図および人物表現においてはいくつかの『聖家族』や『キリストの洗礼』(カピトリーノ美術館)などの宗教圃と共通する性格を持っていること,また個々の人物の表現においては『フローラ』群や肖像圃作品との類似がみられることなどがあげられる。本研究においては,この『三机代の寓滋』を,(1)様式と表現の特徴,(2)図像芹的謡味,(3)同時代の社会状況における紅味の三,点において考察し,初期の他の作品との関連の中にこの作品を位慨づけつつ,そこから初期作品の共有する性格を照射しようと試み,さらに制作背}北が比校的はっきりしている『聖愛と俗愛』について陪釈を試みた。1.様式と表現の牛寺徴間に制作されたと考えられる。未だジョルジョニズモの影翠漿下にある叙梢的な風娯のなかに,しかし人物は力強い感閏表現をともなって描かれている。前贔は中央で大きく二つに分割されている。むかって左側には,豊かに茂る木陰に横向きに向かい合って雌のうえに座る倍い男女が袖かれている。左側の男は黒髪を乱し,腰布のみではとんど全裸に近く,脚を投げfl}し,いま起き上かったばかりのように,右手を地面につき,左手を少女の肩にまわして彼女の顔をみつめている。右側のくすんだ金髪の少女は,髪をミルテの花冠で飾り,白い袖の鮮やかな赤い衣装を身につけ,両手にそれぞれたてぶえをもち,左手を男の脚のうえにおき,右手で自らにロの前に笛をかまえ,男の日を情熱的に見つめている。右半分の荒れた土のうえには,わずかに枝を残した枯れた樹とその半分くらいで折れてしまった幹のもと,二人の幼児が重なりあって眠り,羽の生えた一人の幼児がその一人に脚をかけて樹につかまっている。--llt代の寓謡』は1512年から1515年の間,パドヴァのフレスコと『聖愛と俗愛』の-201
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