⑰ s.ダリにおけるフリーメーソンのイメージとその歴史的源年8月231]から9月20日までヨーロッパ各地をめぐった。しかし,テーマはあまりに研究者:]、キワ松学園女子短期大学非常勤講師新関公私は,S.ダリ作「幻想的風景一暁・英雄的昼・タ図像学的研究を行ったところ,この作品がフリーメーソンの思想と密接な係りを持っていることに気づいた。(「美術史」129号褐載論文ーダリ作『幻想的風景一暁・英雄的昼・タ暮ー』ーフリーメーソンの参入儀礼の象徴図としての解読ーを参照下さい。)ダリのフリーメーソン,あるいは神秘主義に対する関心はこのー作に限られるものではなく,若い時から晩年まで持続的なものであった。そして,そのような思想を象徴するものとして採用された図像のオリジンを追及していくと,一部はルネサンスの新プラトン主義的絵画に由来するか,かなり大きな部分か,18i仕紀末から19世紀前半のロマン主義的美術(絵画だけでなく,建築,舞台美術,庭I卓lなどを含む)に帰芯するように思われた。特に室内と窓からの光の対比,海景,石造建築物(特に壊れた),巨大な岩石といったモチーフの愛好は,18,191仕紀美術に現れている同様のモチーフと深い内的連関を打していると私には考えられるのだか,それを論証するにはフランス革命前後の美術を総合的に把握し,それらの図像の中に一定の象徴性が存在したことをまず確定しなければならない。この1」的のために鹿島美術財団より助成を受けて,1991も渓然として広く,時間は短かく,しかも期待していたエルミタージュ美術館は政変のため立ち寄れなかったとあって,かなり賽料は収集したものの結論を迎くには至っていない。そこでこの報告書では,石造建築物モチーフのうち典型的なものの一つであるピラミッドについての考寮のみを述べるにとどめておきたい。ピラミッドに私が興味を持ったのは,ダリの「幻想的風屎」三部作か,フリーメーソンの参入儀礼一暁=仮の死(参入への仕i発)一杜=哲学的試練の旅ータ葬=再生(参入の成就)を表わしており,その図像学的オリジンの一つに,ドイツの建築家F.シンケルがモーツアルトの「魔笛」のためにデザインした舞台装置圃(1816,ベルリン)があると気づいたことに端を発している。「魔笛」は,フリーメーソンの参入儀礼を,エジプトのイシスイ言仰への参入儀礼に置き換えて表現した歌劇であることは今日よく知られているが,シンケルが抽いたその最終場而であるザラストロの太陽神殿の場面三部作(横浜美術館蔵)の-211
元のページ ../index.html#233