には巨大なピラミッドが抽かれている。ダリの三部作全体の構成はこのシンケルの太陽神殿の場面に多くインスパイアされていると思われるが,特に夕募の参入の成就を暗示する輝く雲の中に,作品に共通する価値観がピラミッドに象徴されている,という仮説に私を尊いた。フランス革命に係わる銅版画にもそれはよく猫かれている。その歴史的背景にはナポレオンのエジプト遠征(1798■1799)があることは言うまでもない。彼の遠征の目的は軍事的なものであったのか,エジプト学的関心にあったのか真滋が分からないほど,ナポレオンは遠征に際し多数の学者(175名),画家をつれていった。その成果は1809年から22年にかけて刊行された「エジプト誌」全21巻となり,シャンポリオンのヒエログリフ解読(1922)となった。シンケルのエジプト趣味あふれる舞台装置画も,このナポレオンの「エジプト誌」に悲づいて描かれたものであろう。古代ローマとエジプトに対する懐古趣味は18世紀中頃に遡って認められるが,そのきっかけの一つはポンペイ・ヘラクラネウムの発掘であった。しかし,歴史の流れの中で考えるならば,賞族のロココ的優美様式の生命力の衰退に対し,新興ブルジョワジーの清新な,力強い,革命的エネルギーを表現する様式として,古代ローマの共和政期の建簗や,純粋な幾何学形態建築であるエジプトのピラミッドやオベリスクが回顧される必然性かあったのだと思われる。秘密結杜フリーメーソンは,根本において個人の人格的完成をめざす非政治的結杜であったが,革命の流れに同調するリベラルな性格を持っており,革命的理念の象徴であったピラミッド,オベリスク,アーチ構造の凱旋門,円柱などの図像を,フリーメーリンの理念を象徴する図像として用いた。あきらかにフランス革命の美術とフリメーソンの美術は通底しているところがあるように思われる。又,フリーメーソンの起源の一つは,中世の聖堂建築に携わった特権的な建築家のギルドなので,その本来の性質からしてもフリーメーソンは,ピュタゴラスやプラトンの哲学にみられる幾何学的・数学的世界観が支配的で,円,正三角形,正方形,正五角形などの純粋な幾何学形態を美にして善なる宇宙の存在論的記号として用いる傾向がある。革命期の建築家か`,完全な球形や円錐形やピラミッド形の建築を沢山構想したことが18, 19世紀のフリーメーソン関係の図像にはしばしばピラミッドが登場する。また,18世紀の啓蒙主義的な風潮の中で,自由•平等・友愛を合言葉に全欧的に広がった18憔紀後半から19世紀の建築史を紐解くと,ブレとルドゥーに代表されるフランスはあり得ないピラミッド形態が隠されていることは,両212-
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