鹿島美術研究 年報第9号
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3年の夏にギリシアに赴き,研究および翻訳に必要な質重な写真を多数撮影すること※2 跡見学園女子大学美学美術史学科報,平成4年3月(第20号)のアルバムの中から採り出されてきたような図像によって成り立っているグループである。第二のカテゴリーは,一見純粋な過去回顧的な思い出の情景のように見えながら,第一のカテゴリーとはどこか,なにかと明晰な識別か困難であるものの,微妙に死の香りが漂っている、そうした一連の図像グループである。第一のカテゴリーが単ーの空間と単一の時間によって構成された図像,第二のカテゴリーか単一の空間につの異質な時間が消入された図像だとすれば,第三のカテゴリーは空間も時間も異質な要素の組み合わせによって出来上がっているといえよう。ここでは死者と生者は図像表現上なんらの現実的な関係をもたない。心理上の様々な意味での,まさに死者の「遠離」が問題になっている。拙稿はそうした三つのカテゴリーを区別するに当たって,藻碑にしばしば登場する犬に着目したものである。最後に,今回の申請の主要課題は上記のようなものであるか,それに付随して古典期アッティカの墓碑浮彫の様式論に関して定評のあるH.ディーポルダーの翻訳をも課題にしていた。;:りその作業がほは完了したことを中間報告させていただくと共に,平成ができたことに対して,麗島美術財団に改めて心よりお礼申し上げたい。史学科報,昭和54年3月(第7号)※1 『パルテノン時代の「時間」の表現形式について』跡見学園女子大学美学美術※3 Hans Diepolder; Die Attischen Grabreliefs des 5. und 4. Jahrhunderts v. Chr., 1965 -239-

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