鹿島美術研究 年報第9号
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6.まとめ一拡大・深化する美術i情報抵界一ワルシャワでは下記の機関を調査した。0ポーランド・アカデミー芸術研究所0ワルシャワ国立図書館版画・写真部0ワルシャワ大学図書館版画室プラハと異なり,研究所や大学図書館を主体に調査したせいもあるが,美術分野での査料・情報の取扱いに美術史研究者等のウエイトが高いことを感じさせる。各機関が横並びで研究・協議する姿勢には乏しく,芸術研究所での文化財・建築物等の写真コレクションとその分析・調査資料の刊行,同じく美術関係文献目録の編集・刊行とワルシャワ大学での画像データベース構築の試みは,全く別の土俵で行われている。今回調査できなかったワルシャワ公共図書館の美術部門,クラクフのビブリオテカ・ヤギロンスカの活動を総合すれば,全体像かいくらか浮かんでこよう。いずれにしても,諸外国からの抑圧と戦禍をくぐってきた歴史の重みであろうか,賽料の保存継承には並ならぬ努力を払っていることが感じられた。なお,現代美術を扱う情報センターが近年設立されているか,全国レベルで影翠漿力を及ばすまでには発展していないとのことである。今回参加したモスクワでのIFLA会議,訪問・調壺したソ連・東欧の美術図書館は,美術賽料・惜報をめぐる環燒に新たな動きを感じさせる。それは一言で言えば,美術情報世界の拡大と深化である。まず,ソ連におけるグラスノスチの進展と美術図書館界の賽料的・人的資源は広く世界に向けて聞かれつつある。東欧においても状況は同様であり,ション上でのある程度の阻害要因を除けば,近年中に西欧とソ連・東欧そして日本の関係は,格段に緊密になろう。そして1992年インドで開催されるIFLA大会を契機に,アジア祉界一般がこれに加わることになろう。次に,文書賽料への注目,芸術百科事典編鱗への協力,などは領域の拡大であり,かつ美術図書館活動の内容的な深化と考えてよかろう。また,より分析的な美術書誌の作成や面像データベースの構築には,研究者とドキュメンテーションのプロフェッショナルの協同が不可欠であり,美術ドキュメンテーションや画像ドキュメンテーションにおける新しいタイプのスペシャリストの出現が予測される。コミュニケー291

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