鹿島美術研究 年報第9号
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年7月予定)に譲るか,期待にたがわぬ水準の高いものであった。ことに研究発表第ニセクション「芸術の時間=空間表現」日本を中心とする東洋および西洋の美術作品のなかに,時間と空間と要素がどのように表現されているか,四季の表現,絵画のなかの物語的要素,祝祭装飾など具体的な作品についての研究発表と討議第三セクション「概念と方法」芸術と日常生揺鑑賞形式の問題,素描の役割や絵画理論など,研究の方法論まで含めた幅広い分野についての研究発表と討議第ーセクションは異文化の摂取の問題になるが,すでに充分に論じられているジャポニスムの問題を避けて,それ以外の日本と西洋の芸術に印された相互の関係を,作品を通じて検証することに主眼が置かれた。第ニセクションでは,日本,西洋に共通する問題を双方から論じて,芸術表現の特質が浮き彫りになることが期待され,第三セクションは美術史で現在新しく問題となっている話題をとり上げて,最新の成果が発表される場となるように企画されたのである。かくして両洋を問わず中抵から現代まで,幅広い内容を論議する地盤が設定されたのである。9月18日に奏楽堂の開会式で始まった東京会議は,19日から東京国立博物館大構堂に舞台を移して,2日間研究発表を行なった。高階教授の基調講浪から,シャトレ教授の全体の総括まで,台風によるあいにくの天候にもかかわらず,熱心な参加者の意欲と東博をはじめとする関係各位の並々ならぬ支援に支えられて,大会は成功のうちに閉器した。個々の発表の具体的内容は,いずれ刊行される会議報告書(1993の場以外に設けられた,お荼会やレセプション,研究発表後に行なわれたエクスカーション等をつうじて,日本の研究者と西洋の研究者が親しい交流の場をもったことは,互いに理解する上できわめて貴重な時間であったと思う。西洋の研究者も,日本に身近に接することでその認識を新たにしたようで,それは今後日本の研究者が国際的に活躍するさいに少なからぬ財産となるはずである。-297

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