鹿島美術研究 年報第9号
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3.平成元年。2年度「美術に関する調査。研究の助成」① 狩野山雪とその後継者の研究(継続)2.論文「狩野山雪の『盤谷図』について」林進研究者:大和文華館学芸部次長江戸時代初期の画家,狩野山雪(1590-1651)をとりあげた初めての特別展であり,今まで一部の研究者しか注目されなかったこの画家の美術史上における意味とその画の魅力を広く知らしめた。この展観が契機となって,山楽・山雪及びその後継者,いわゆる「京狩野」の関心が高まり,たくさんのすぐれた研究成果を生んでいる。私ども共同研究者(奥平俊六,藤田伸也,中部義隆,城野誠治,林進)は,『大和文華』82号「狩野山雪特輯」(平成元年9月発行)において,その研究成果の一部を発表した。その内容は次の通りである。1.論文「山雪の奇想ー問答風に一」辻惟雄院障壁画全図版・全データ。山雪研究の第一人者,辻惟雄氏の論文は,山雪画の魅力について語り,その画の「異端性」とその由来について具体的に説明している。その中で,「(略)たしかにかれの絵には,見る人の意表をついてどぎまぎさせる要素がある。真正極楽寺の寒山拾得図や,もと妙心寺天祥院の老梅図襖などその典型だ。だが,これらの絵のおどろおどろしさ,奇矯さは,意図された演出によるものだけでなく,なにか,かれの身内に巣くう得体の知れない物の怪のなせる仕業といったものを感じさせる。つまり,かれの絵には,恐らく自身も当時の人も気付くことのなかった,意識下の世界が顔をのぞかせていて,シュールレアリズムのような現代の絵画を体験しているわれわれには,それが感知できる。そんなところが山雪の絵の関心の集まるゆえんだろう。」と述べ,画家の個性を軸とする新しい研究の視点を示した。1986年の秋,大和文華館において開催された「狩野山雪ー仙境への誘い一」展は,3.論文「『山楽山雪山水帖』について」奥平俊六4.作品解説「狩野山雪筆雪汀水禽図屏風」我妻直美5.調査報告「如庵附属書院障壁画調査報告」中部義隆6.狩野山雪作品図版11件及び『山楽山雪山水帖』全図版・全データ,如庵附属書林進(平成元年度助成)-304

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