中,下段の三種類のタイプのフリーズのうちで,枠組の中の絵とジョルナータの結合が認められるのは,緑と赤茶色の幣と,菱形を含むフリーズである。この有機的結合に大きな役割を果たしているのは,フリーズ内の二個の菱形である。絵から延びてきたジョルナータの線は,菱形の輪郭線に沿って蒻かれている。中間のニヶ所の菱形と四隅の角と合わせて四ヶ所のジョルナータ分割の候補地点を各辺が持っている。左壁のクローバーを含むフリーズは直接的な結合は持たないようだか,水平方向のジョルナータの連続にある程度の役割を果たしているらしい。絵と装飾をジョルナータで意図的に結合させている理由には,次の三つか推察できる。第ーは足場の都合からであろう。仮に,絵と装飾を別々に制作するとしたら,それに適した足場を準備しなければならない。第二は,墨糸による線引きのためには,境目付近はひとつのジョルナータである方がやり易いということもできる。垂直,水平の位置を壁面に印すための墨糸の線は,イントーナコが柔らかいので糸目の跡が連続した凹んだ点として明瞭に残っている。第三に,この壁圃におけるジオットーの総合的構想に関連して推察すると,絵と装飾の境目は単に絵の端という以上の意味があるように思う。個々の圃面は枠組の所で完全に終了しているのではなく,舞台の袖に隠されて見えない部分にも場而が続いているように,枠組以上の情娯の広がりを感じさせるような効果を謡図していたのではないだろうか。そうだとすれば,絵と装飾の視党的前後関係の問題も含めて,境目の処理はきわめて重要になってくる。この件に関してジョルナータの連結以外に別の手法を併用していると考えられる。つまり,絵に按する緑の幣を後でセッコ法で塗り重ねていることである。この緑の幣で画面の端の切り方の数ミリ単位の微妙な調整が描写後に可能となるわけである。光輪についても,<斜光線>を照射するとストゥッコによる盛り上げは,いっそう明確になる。厚みは,その周縁部で厚くなっているが,最高でも1センチどまりである。これも,その技法はチェンニーニがよく伝えてくれており,試作してみることは容易である。(だたし,厚みが1センチを越えると,周縁部にイントーナコを引き裂くような収縮亀裂が生じる危険性がある。)次に,チェンニーニの第102章では明らかではないストゥッコで光輪の盛り上げをする時期の問題であるが,光輪を盛り上げるときに下の絵を部分的に壁りつぶしていることから,フレスコ画法で彩色した直後ではなかったかと思われる。そして,漆喰が乾いた後に,ワニスかモルデンテを塗って金[ 2 J光輪ストウッコと箔置きの技法について-313
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