鹿島美術研究 年報第9号
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(3) 第7回研究報告会本年度の研究報告会は,平成4年度の助成金贈呈式に引き続き,平成元年度と平成2年度に助成を受けた研究者の中から選ばれた4名の研究者からその研究成果についての報告があり,約130名の出席者が熱心に聴講した。研究報告者と報告要旨研究報告者:高橋氏、片桐氏、小川氏、小林氏(左より)① ロダンとベルギー_支える構造の意味報告者:東京国立近代美術館研究員高橋幸次概要:オーギュスト・ロダン(1840-1917年)研究において,彼がベルギーに滞在した時代(1871-77年)は,いまだに謂わば暗闇に沈んでいる時代である。この時代,ロダンは異郷にあって大方は生活のための装飾仕事に費やされ,<下彫りエ〉としての無名の地位に甘んじざるをえなかった。しかしそれでもこの時代は模索の時であったといえ,後の1880年に<地獄の門>(1880-1917年)の制作を国家から受注して,杜会的に彫刻家として公認されるばかりでなく,彼の自己様式を確立するという時期の直前の,ってみればロダンがロダンになるための重要な準備期間であったし,彼の最初の本格的な独立したく作品〉である,等身大の立像<青銅時代>(1875-76年)が制作された時期でもある。つまり,このベルギー時代は彼の修業時代の修得と試みが集大成され18 -

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