4.平成2年度「美術に関する国際交流の援助(海外派遣)」① 中国道教尊像の調査研究_シカゴ・フィールド博物館蔵品を中心に_1991年9月1日成田発17:25UA882便にて,同日15: 00シカゴ到着。市内クラリッ12日まで毎日午前9時より午後4時30分までフィールド自然史博物館の展示場及び収13, 14両日はシカゴ美術館で関係作品の調査を行ったが,これは主に中国仏教雌像16日以降は,クリーブランド美術館,フリヤー美術館,サックラーコレクション,研究者:武蔵野美術大学造形学部教授田辺三郎助ヂホテルに投宿。翌2日直ちにフィールド自然史博物館に赴いて,同館人類学部門主任ベネット・ブロンソン博士他と会談して日程を打ち合わせる。3日はこの調査に関しての仲介の労をとってくれたシカゴ美術館東洋部長・蓑豊氏を訪問する。4日より蔵庫内で調査に当たる。同館の収蔵品中,中国の石造品は200点を超え,それらは1910年前後に中国西安で買集められたもので,なかに数十点の道教尊像を含んでいる。小品が多いが石造であるため移動にかなりの労力を要し,調査・撮影にも手間がかかるので,助手として京都市立芸術大学専任講師,松田誠一郎氏の同行を得たが,これは極めて有効であった。が対象となった。道教尊像はその図像的成立に関して,仏教聰像のそれを多く学んでのことと考えられており,その点を確認する要があった。メトロポリタン美術館,デンバー美術館等で中国・道教腺像,仏教雌像の両方を調査したが,道教尊像に限っていえば,以前より注目していたサックラーコレクション中の碑像が最も評価すべきものと判断された。これは北周の建徳元年(572A.D.)在銘の碑形をした大作で,道教聰像のようやく独自の形態を有しはじめた姿を最もよく示すもので,この種石造品中の優品としても高く評価されるものであった。中国道教尊像については,わが国においては松原三郎氏の「道教像論考一斉周の道教像について一」(『中国仏教彫刻史研究』吉川弘文館,昭和41年)がほとんど唯一のものであって,他に知らない。今回アメリカにおいて,ポンティネン氏による論考の二,三を知ることを得たので,これから,その論文を検討しようと考えているが,それにはなお数年を要するであろう。とりあえず今回調査物件の大要をまとめてみると,まず第一に,フィールド自然史博物館の所蔵品は,1910年頃,西安市及びその近郊に-338-
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