鹿島美術研究 年報第9号
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②Triton X -100*4/蒸留水によりクリーニングする方法。例:油彩画/市販のキャン①Loose-Lining(木枠による擦れを防ぐために行う。)この方法は,まず木枠にポ3)クリーニング・しみ抜き③) 4)劣化予防処置③BEVA-D 8の使用。例:J.Josephの油彩画/市販のキャンヴァスの縁の絵具の①1 % Ammonium Citrate溶液/非イオン水を用いてクリーニングする方法。例:③Fullers Earth *5による,しみ抜き。例:コラージュのある油彩画/綿布の水にされたものであるが,画面全体に亀裂が起こり,数ヵ所にわたって絵具が暗色化していた。暗色化の原因は,作家の用いた素材である絵具あるいは,媒剤か下層から表面に浸み出してきたものと思われる。又,この素材は今だに乾燥しておらず,上層の絵具層に亀裂や浮き上がりを起こす要因となっていた。剥落止め。この絵の側面の布は全て欠損しており,その縁では絵具層の剥落,破れ及び,布の欠損が見られた。又,支持体の黄麻布は酸化し大変脆くなっているため,剥落止めにBEVA-D8を用いた。これはBEVA-371のエマルジョンタイプの溶液で,乾くと透明なフィルム状になることから,より強い固着力をもつ。又,絵具層の内部にまで浸透することなく,面と面を接焙する働きがある。ニコチンの付着により画調の歪められた作品に用いた。ヴァスの汚れと埃の除去に用いた。よるしみの除去。Marca-Relliの作品は,グランド層のない綿布を最初の層としてキャンヴァスの小片や油絵具が塗られた布を何層にもわたってコラージュしたものである。作品は倉庫に保管されていたものだが,水漏れの被害をうけ,画面の右辺に沿って大きなしみをつくってしまった。このしみを抜くため,蒸留水を含ませたクレーを用いた。クレーは水がキャンヴァスに直接浸み込むのを防ぎ,しみだけを吸い取る働きをする。この方法でかなりのしみが安全に抜けたが,コラージュや糊の層が厚い部分では完全に抜くことはできなかった。(写真参照①②リエステル系の布を強く張る。次に,その上にオリジナルの絵を均ーに張るものである。キャンヴァスとポリエステルの間に接着剤は用いられない。又,ポリエステルは天然繊維に比べて耐久性と強度に優れ,湿気からくる布の伸縮も小さいので有効である。至って簡単な構造であるが,絵の支持体は保護され木枠からく342-

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