② 旧浅野家コレクションに関する基礎資料の研究③ 近世日本陶磁・漆工に見られる西洋絵画の受容と変容について研究者:広島女学院大学助教授原田佳子優れた文化とは,確固とした一つの個性を持ちながら,共通の高い理念に連なるものである。そこに地方文化に特色が求められる由縁があるが,旧広島藩主,浅野家のコレクションがもし再現するならば,その地方の特色を形成する重要な役割を果たすものと思われる。およそ250年にわたる藩政時代に収集,所持された浅野家コレクションの作品は,戦前の「国華」などの専門書に取り上げられ,高い評価を受けている。中でも室町時代の和漢の水墨画に優れたものが多く,その他道具類なども見るべきものが多々あった。しかし前にも述べたように多くの作品が離散してしまっているので本調査研究によって浅野家コレクションに関する文献・資料の収集と作品の所在を追求し,将来,展覧会の開催,資料目銀(図録)の出版などの基礎資料を作成したい。旧浅野家コレクションには国宝伝趙昌筆「林檎花図」(畠山美術館蔵)重文躍窓筆「竹鶏図」(東京国立博物館蔵)などの中国絵画,重文雪舟筆「山水小巻」(山口県立美術館蔵),重文「男会三郎絵詞」(文化庁蔵)などの日本絵画に水準以上の作品が多く含まれており,現存する作品を可能な限り調査し,旧浅野家コレクションを再現,評価し,特色を明らかにしたい。また,1913年(大正2)縮景園内に浅野家所蔵の書画,武具,古器物,茶器,工芸品などを一般公開する「観古館」が建てられ,多数の入館者が記録されているが,将来,地元の美術館で個人所蔵の作品が可能な限り収集され,いつでも優れた古美術を観ることが出来る場(例えば「観古室」)を作る足がかりになればと思う。研究者:神戸市立博物館学芸員近世陶磁器を代表するものは有田磁器を中心とする磁器窯製品と,京都で製作された陶器を中心とする雅陶であろう。これらの資料には,伝統的な日本独自の意匠と,中国的な漢画モチーフの意匠が加飾されることがほとんどだが,時に西洋絵画の図柄をとり入れ,国内向けに製作した作例が見られる。西洋人物図,西洋風景図などが染岡泰正-358-
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