⑪ 明治期の金工家およびその作品の調査研究⑫ 越州窯初期青磁の研究ネーデルラントに比べても(彫刻に絶対的優位を与えるという点で)最も保守的な立場を表していると言えよう。しかしそのことによってかえって,この時期何故に彫刻から絵画へと時代の精神の中心的担い手が推移しなければならなかったかについて,つまり彫刻と絵画に各々期待された役割が何であったかについて,光を投げかけてくれるのではないかと思う。研究者:東京国立博物館研究員横溝廣本調査研究の目的は,いわば未開に近い分野である近代日本の金工史において,当時の金工家の活躍の場であった博覧会に関する査料を洗い出し,その時代の金工の様相,金工家の動きをはっきりさせようとするものである。生活様式の変貌に伴って金工品を生活の中で使うことがなくなったこの時代のほとんどの金工家の生き残りの道としては,輸出向けに制作すること,および博覧会に出品して売却するほかなかった。そこで,その博覧会に出品された金工品の作家を調べ挙げれば,この時代の主要な金工家に関する情報として的を得ているはずである。特に万国博覧会の出品作品については,自国の技術を世界の他の国に披露するという目的で作品が選定されており,当時の政府の立場から見たその時代の日本の金工品の姿を一瞥できることにもなる。明治期の金工品は確かに日本古米の工芸の中では異質の趣味であることが多く,日本人にはあまり好まれない。輸出向けに制作されているだけあって,日本国内よりも輸出された海外の方が数多く残っていると思われる。もちろん,品質の高くない作品も少なくないか,巧妙で力強い作品もあるのにもかかわらず,研究されていない。現時点までに申請者が調査した各博物館の担当学芸貝からこの時代についての情報の少ないことに対する苦労について一様に聞かされていることから察すると,本研究の成果は関係者にとって意義深いものになることは間違いない。研究者:大阪市立東洋陶磁美術館中国の初期の青磁である,いわゆる「古越磁」は後漢から三国,両晋,南北朝にか出川哲朗365-
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