⑰ 敦煙壁画における山岳表現彼の図像の革新性に負う所が大きいが,その革新的図像は,少なからず過去や同時代の図像からの影響下に生み出されていることが近年の研究の中で指摘されている。ロバート・ハーバートらによるこのことに関する指摘の中でも,特に申請者は,ミレーの修行時代,言いかえれば画風形成期(1833■47頃)に受けた影籾は,彼の独自の芸術形成の根幹を為すものといえ,彼の農民画にも色濃く反映しているものと考える。しかしながら,ミレーの芸術の性格をとらえる上で極めて有意義と見なされるこのことに関する研究は,いまだ不充分なものと言わざるを得ず,調査研究の余地を多分に残している。そこで,申請者は,ミレーの画風形成期において,極めて重要な役割を荷なったトマ・アンリ美術館及びルーブル美術館の所蔵作品の中から,いかなる作家作品がミレーに影脚を与えたかを探るというテーマを設定した。調査の対象をミレーが実際に見ることが可能であった絵画,素描,版画に限定することで,研究の論証性を高めるものと確信する。以上の調査研究を通じて,ミレーの画風形成期に影籾を与えた作品の実態を提示することにより,ミレーと過去の芸術との結び付きの様態を実証的に解明することが期待できる。そして,そのことは,同時にミレーの真のオリジナリティを浮き彫りにもすることになる。そして何よりも,ミレーの図像研究に大いに貢献するものと思われる。研究者:大垣女子短期大学非常勤講師小島登茂子敦燎壁画に対しては,これまでは図版など限られていることもあり,仏教絵画としての主題の比定,そのモチーフの西域,中原との影聾関係などに集中してきた。本研究ではこの敦燈壁画群中の各時代にわたって随所で見られる山岳表現に注目して,モチーフとしてだけでなく,その構図法・技法などの分析をおこなうことによって,説話表現の展開の発展段階と深くかかわっていることを指摘したい。収集した資料から説話表現についてはすべての主題の山岳表現を主体とする描き起こし図を作成し,山岳表現の構図法,モチーフの比較検討をするだけでなく,樹木,動物,人物表現との関連から様式分析を行い,各時代の特徴を明確にする。-384-
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