⑲ 鍬形惹斎紹真(北尾政美)の総合的研究従来の室町画家研究は,それぞれの画家の生きた環境の違いを重視せず,すべて同じ「画家」として平面的に扱ってきたきらいがある。基本的に禅宗の環境にあった舟や祥啓,マーケットの論理の中で室町的な合理性を追求した元信など,時代の要請する共通の課題に直面しつつ,それぞれの画家の生きた状況にはずれがある。それは,画家の作画態度にも影響を及ぼしたはずである。相阿弥は幕府同朋から町衆の中へとダイナミックな変身をとげた人であり,また活動の多面性からいって,画家としてのみ捉えるのには無理がある。本研究では,様々なジャンルにおける相阿弥イメージを総合的に考察することにより,応仁の乱を契機とする室町文化の変化を体現する歴史的存在としての相阿弥像を追求する。研究者:調布学園女子短期大学助教授小澤本研究の目的は,近世後期の浮世絵師であり,大名家御用絵師となった鍬形慇斎紹真(北尾政美)の総作品目録(全作品の実見および写真版作成)により,鳥敵図法,略画法などを近世的感覚からより近代的感覚にて実施し実践した原因を探り,また作画の推移を明らかにすることにある。かつ,鍬形慇斎紹真の御用絵師としての登用起因,また黄表紙版本等の挿画の描写内容および構図性,そして「江戸一目図屏風」にみられるような景観図法の作画アイデアがどこから学びえたのか,そして,それがどのような後世の画家に影孵を与えたのかも探究することも付加される。その価値および意義については,近世後期の画檀において,狩野派に属することなく,御用絵師に登用され(直後,狩野派門人となるが),特異な近代的かつ蘭画図法をも採用したと考えられる作品の形成原因や,画壇への影靱について寄与しうるものと考える。研究の構想については,従来の研究論文や資料紹介の上にのっとって,現状での作品総リストを作成し,それに従いながら個々の作品を実見,調査・分析を行い,作画期,作品としての特色,構図の特色,彩色,揺法の特色,版本の場合は著述者,版元との関係等を記載した。個別カードを写真版を添付して作成する。その間,新らたに得られた情報により,新らたに総リストに加えられた作品の真偽に関して検証し,さらに個別カードを作成する。このような総リストおよび個別カードの作成に従いながら,作画の推移としての特色をみたい。又,近世の津山藩の古文書に惹斎に関する弘-386-
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