鹿島美術研究 年報第9号
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⑩ 江戸期の松前地方における美術・小玉貞良を中心にら1罰作も数多く存在し,問題を一)屑複雑化している。@ イタリアルネッサンスの肖像胸像の研究記事が発見されたので,この古文書の一層の調査も加えたい。研究者:北海道立函館美術館学芸員五十嵐聡美これまで,江戸期における北海道絵画史の中で最も先行する画人として知られ,研究されてきたのは蠣崎波靱である。しかし波聾以外では波籾とその弟子にスポットがあてられるくらいで松前の美術そのものは,ほとんど研究されていないといってよい。小玉貞良は江戸中期,松前を中心として活躍した絵師でありその活動時期は,波特より半世紀さかのはる。江戸期の松前は波粋だけではなく,貞良をはじめとして様々な美術活動があったと考えられる。波靱のみで語られてきた江戸期の松前文化を再検討したい。研究者:東北生活文化大学非常勤講師芳野ルネサンスの問題は,いうまでもなく諸分野の大先逹により,様々な側面から検討が加えられてきた。しかしなから特に肖像胸像の問題は時代の人間観と深く関わっていながら,個々の作品考察の際の最も基本的な要素である帰属と制作年代の問題を等閑視したままに検討されてきた感は否めない。さらに,この形式の作品には遣憾ながその一方で,あくまでも個別に作品自体の研究が進んでいるのも確かである。しかしながらその成果をもう一度,美術作品の歴史の中に系統的に位置づける段階にまでは至っていない。本研究では,そうした個別の研究の成果を再検討したうえで,15世紀を中心とした肖像胸像のカタログ化を通してそれらを総合し,さらに同時代を中心とした文献史料を綱羅することで,作品の機能の問題にまでふみこんでいく。こうした作業により,ただ胸像彫刻の分野にとどまることなく,幅広くルネッサンスの人間観という問題にまで,新たな基盤,新たな視点を付与することにつながっていくであろう。明-387

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