④ 元代白描研究⑤ 金銀泥絵の探求II:連歌懐紙からみた中世景物画の図像学これまでのグリス研究は彼の画商カーンワイラーのモノグラフィーやダグラス・クーパーの研究に依拠するところが多かったが,最近のCh.グリーンやCh.ドルエの研究や昨年のグリスーローザンベールの書簡の初公開に見られるように,従来の見方に捉われないグリス再考の機運もうかがえる。本研究はこうした現状も十分視野に入れながら,わが国では手薄な後期キュビスムの研究,そしてまた20年代の「秩序への回帰」に先立つ第一次大戦直後の複雑な芸術状況の研究に寄与することをめざしている。研究者:東京大学東洋文化研究所助手梁楷の充分な理解のためには,より詳細な元代白描画の研究が必要であることが明らかになった。申請者のこれまでの研究から、梁楷は他の南宋画院の画家とは異なり,白揺的な筆法を多く用いるところが彼の特徴であると考えられるからである。一方,元代の白描画は北宋の文人系白描画の伝統を継承したものとされるが,北宋と元をつなぐ南宋の白描画についてはよく明らかになっていない。それゆえ,梁楷が北宋から元代に至る白描画の歴史において極めて重要な位置を占めると考えられる。そもそも白揺画は北宋以降,文人画の主要な技法の一つとなったが,これまでの研究は決して充分とは言えない。元代白描画の精査によって,中国文人画の変遷,梁楷の史的位置に対する理解をより一層深めることができよう。更には,宋代白描画と何かのかかわりがあると考えられる日本の白描絵巻のあり方の,より具体的な諸相も明確になり得ることも期待出来る。研究者:静嘉堂文庫学芸員玉贔敏子金銀など光沢をもつ金属質の素材は,世界中の絵画のなかで他の顔料や水墨などと,併用されることが多く,とくに日本絵画は,その使用が著しいと指摘されてきた。本研究は,絵画に使われた金銀加飾技法のうち,五世紀末に遡る起源をもつ金銀泥絵をとりあげ,宗達の金銀泥絵に至るまでの展開と各時代における装飾の意味を探求するものであったが,次第に問題点がく素材〉とくテキストとの相関性〉の二つにしぼられてきた。前者の問題392 林秀薇
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