鹿島美術研究 年報第9号
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⑦ パルミラ彫刻における風俗的諸要素の研究⑧ キプロス島の10世紀から13世紀になる諸聖堂の現地調査11世紀から13世紀の中期ビザンティンのモニュメンタル絵画史は,いわばビザンティンまた,同時代の文献・画中資料を収集整理し,制作及び使用の状況を知る手掛かりとしたい。これらの基礎資料をもとに新たな観点から中世蒔絵を分析し,従来の方法と総合し,編年を試みたい。その結果をもとに蒔絵意匠の特性を明らかにし,同時代の絵画,工芸などとの相互関係を知るための一助としたい。研究者:財団法人古代オリエント博物館研究員パルミラの美術史的研究の殆どは,欧米の研究者によってなされ,我が国の研究者でこの地域に関心を寄せる少数の人々もその興味はもっぱら,歴史的な方面が主であった。しかし,国際貿易都市として発展したパルミラの美術作品には,東西文化交流が実際に盛んに行われた紀元前1世紀から紀元後3世紀にかけてギリシア・ローマ的な要素,イランの影聾そして土着的傾向か渾然一体となっており,その影籾は中国・日本へと続いている。それらについての調査・検討を欧米の人々とはまた,違う視点で見直すことが必要であろう。前述した米春の国際会議の時期には,なら・シルクロード博国際交流記念財団による発掘もおこなわれており,1992年には地下墓の全面発掘を予定している。この発掘は奈良県に関わりのある隊員によって行われているため,私は正式メンバーではないが,同隊によるパルミラ研究会で講演を行ったり,今までの成果について意見交換をしたりして協力する立場にあるので,この機会に現場で実地の研究を行いたい。今回の発掘では,おそらく未盗掘の墓で彩色された人物彫刻も多数出土すると思われるが,シリア政府や欧米の発掘方法とは異なる緻密な日本式の発掘で,新たな事実を提起することが期待されている。彩色された彫像は,発掘して数分の後には,全く褪色してしまうというが,その実態と彫像奉納の時の実像を把握したい。特に人物像における風俗的諸要素の研究は周辺諸地域との関係を考える上でも重要である。研究者:共立女子大学国際文化学部専任講師木戸雅子下佐江子-394

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