鹿島美術研究 年報第9号
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⑦ 二神型宗教造形の分布と系譜に関する研究I 合掌型:僧形あるいは有髪で,離れて立つ。古式で江戸前期から中期。研究者:岩手県立博物館学芸第一課長大矢邦1.二神型宗教造形の種類と分布についての基礎調査これまでの調査により,岩手県北から青森県にかけての二神型懸仏,及び岩手県和賀地方における二神型山神像については調査済みであり,当該年度は二神型宗教造形の種類と分布範囲の基礎調査に重点をおいた。(1) 長野県上小地方の石造双体道祖神調査石造双体道祖神については,既に多くの報告書が刊行されており,群馬県倉渕村所在の寛永2年(1625)像を最古に,元禄以前に遡る資料の所在範囲は,新潟県1体,長野県6体,山梨県3体,静岡県4体,神奈川県6体,群馬県4体,であることが知られている。今回は,元禄期から江戸末期までの長期間にわたって造立がみられる長野県上小地方(上田市・小県郡)の石造双体道祖神について現地調査を行い,形制と造立年代の関係について分析を試みた。その結果,形制上4種類区分でき,造立年代と密接な関連を持つことを確認できた。II 握手・抱擁型:明確に男女像で,江戸中期から後期。III 盃・徳利型..男女像で,江戸後期。即ち,石造双体道祖神の典型として人気のあるII・III・N型は後期の普及・終末期形態として発生したものであり,その原初形態は①僧形あるいは有髪の,②何れが男女とも区別のつけ難い二体の像が,③合掌して離れて立つ,という素朴な造形であることが明らかになった。このうち②③は岩手県北の二神型懸仏に共通することである。また,祭日に白粉を塗るケースがみられたが,これはオシラサマに毎年1枚オセンダクと称する布を着せる行為に通ずるものであろう。(2) 人形道祖神基礎調査村境に立てられたり,小正月行事に登場する人形道祖神は(1)と関連するところが多く,また,一対の男女神像の形で祭られることもある,折りよく「道祖神の源流」と称する特別展が川崎市民ミューゼアムで開催されたため,同展を中心に基礎調査を行w 剣持型:男女像で,剣は男性,江戸後末期。70 -

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