鹿島美術研究 年報第9号
94/428

名称は,ドウロクジン(群馬県六合村・吾妻町),ドウソジン(群馬県吾妻町・嬬恋村・中之条町・長野原町),カドニュウドウ(神奈川県山北町・静岡県御殿場市),オッカドボウ(東京都奥多摩町),カドドウシン(山梨県丹波山村),カドオトコ(山梨県上野原町),カンドウサマ(山梨県足和田村),オデクサン(山梨県芦安村),サンクロウ(長野県白馬村)などがある。紙人形や着物を着せる男女像としてドウロクジン(長野県長野市・野沢温泉村),ドウソジン(長野県戸隠村),ドウクラジン(新潟県十日町市),オデクサン(新潟県能生町),カンタサン(長野市),蒻の男女像としてドウラクジン(新潟県広神村)がある。性差表現の無い一対像としてオホンダレサン(山梨県芦戸安村),オニ(静岡県清水市・修善寺町)がある。これらは祈願を受けた後,村境の祠や道祖神の前に置かれることが多く,石造道祖神以前の姿を示唆するものとして注目されている。②の地域で祭るものとしては,一体のみのものと,男女一対のものがある。木偶一対のデク(富山県入善町)やセドカミ・セノカミ(山形県立川町)はコケシ状あるいは棒状である。話人形としてはジサバサ(新潟県山古志村),ツナハリ(千葉県木更津市,ツナに吊す小人形)。長野県松本市付近には男女一対の木彫貰人神形の道祖神像があり,離れて立つ独立型と抱擁型とがあるのは石造道祖神像に通ずる。以上,人形道祖神の特徴として,①分布が北陸・遠信以東の東日本に偏在すること,②家ごとに祭る像には男女一対型が多いこと,③村あるいは地域で作る像は,男性一体型が基本型であり,男女一対型は少数であること,④木像の場合,造形的には頭部のみで首以下は棒状であること,が明らかになった。このことからすると,一対型は基本的に家の神であり,形代であると言えそうである。(3) オシラサマ基礎調査東北地方の二神型の代表的なものとしてオシラサマがある。今回は,主として文献調査に一部現地調査を加えて,オシラサマ信仰の分布確認を行った。オシラサマが最も濃密に見られるのは岩手県で,約900件が知られている(件数はオシラサマ保有戸数)。特に上閉伊,下閉伊,九戸,気仙などの沿岸地区や県北の二戸地区に多く,人形道祖神のある北上川西側地区にはほとんどない。年号が確認されてい72-

元のページ  ../index.html#94

このブックを見る