(1) 考古•発掘例の調査縄文時代の土偶は膨大な数が発見されているが,明確な一対像はこれまで確認されていない。弥生時代の遺跡からは,偶像の出土数自体は少ないが,木偶や石偶に一対像が発見されている。① 木偶滋賀県湯ノ部遺跡及び大中湖南遺跡から,それぞれ大・小一対の木偶が出土している。ともにウエストを絞り,湯ノ部の小には赤の彩色があり,男女一対の可能性がある。他に1体だけの木偶が4例ある。② 石偶鹿児島県山ノロ遺跡から,軽石製の大・小一対の石偶が出土し,小には乳房がある。他に1体だけの石偶が数例ある。③ 土偶形容器土偶は少数の出土例はあるが,一対のものはない。土偶形容器は長野県を中心に,山梨県,愛知県などで約20例発見されているが,そのうち一対のものが1例ある。長野県腰越遺跡の箱状石組の中から並立した男女一対の土偶形容器が発見されている。女の方が大きく,乳房がある。以上,弥生の遺跡から男女一対と見られる例が発見されており,「男女一対」は東南アジアの民族事例に結び付けられ,先祖神・祖霊神と解釈されている。但し1体だけの出土例も多い。(2) 民族事例① 朝鮮のチャンスン村境に立てられる男女一対の木偶。頭部を彫り,首以下は棒状で,「天下大将軍」等と墨書している。② 高麗・李朝の木偶東北福祉大学芹沢記念館で4組の男女一対の小木偶をみたが,詳細は不明とのことである。③ タイ・クメール族の先祖神の依り代-74 -
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