鹿島美術研究 年報第10号
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隋彫刻は北斉・北周彫刻を基盤として成立したのであるが,その際,両者といかに相違する新様式を確立したのか。そして最後に,d)隋彫刻は北魏から唐代にいたる中国彫刻史上にあって,いかなる史的意義を占めうるか,という諸問題に検討を加え,隋彫刻の成立過程とその意義を解明することを目的とする。現在,アメリカの主要博物館には,隋および北斉・北周彫刻のもっとも典型的な遺品を数多く所蔵している。またインド,東南アジア彫刻の優品もアメリカの各美術館に数多く分蔵されている。したがって,隋彫刻の成立過程を解明するためには,すなわち隋彫刻の成立過程に果たしたインド・東南アジア彫刻の連関性を解明するためには,これらのアメリカの主要博物館に所蔵されている諸彫刻の実地調査と資料収集が不可欠の作業である。本研究を申請した所以である。⑨ 1950年代における「具体美術協会」研究者:美術評論家BERTOZZI BARBARA 具体は国際的な評論の神話となった。しかしそれにもかかわらず,日本に,ヨーロッパに,そしてアメリカに散らばった,このグループに関するすべての資料を調査し,集め,そして再編成する目的を持った研究者は誰一人としてなかった。研究の目的は可能な限り,学術的で厳密な方法により,この作業を行うことである。作業は多くの国を訪れ,具体美術の活動の系統的で実証的な展望の概説にねらいを定めて行う。この展望は,今や西洋の評論が必要を感じているところだ。研究の価値は,このテーマに絶対的なものとして主要な行為である,一冊の本の出版にねらいを定めるべきであろう。⑩ 「古赤絵」と称される明代上絵付陶磁の様式的特質に関して研究者:東京大学大学浣人文科学研究科美術史学専攻博士課程矢島律子「古赤絵」に関する資料を多数揃え,綿密なデータを作りあげることは,現在まで曖昧にされてきた「古赤絵」の概念を明確にし,再定義することによって,これに術上の正当な地位を与えることができる。おそらく「古赤絵」と称されている一群の上絵陶磁の実際の内容は,複数の異なる-85 -

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