15世紀初期の絵画事情の究明ばかりか,マザッチォ,マゾリーノ両者の様式の形成過跡出土品を中心に京都市域の発掘品を対象として調査を実施し,平安時代後期の様相を明らかにしたい。⑭ プランカッチ礼拝堂壁画の制作過程についての研究研究者:東北大学文学部助手高梨光正これまでのマザッチォ,マゾリーノ研究,或いはプランカッチ礼拝堂壁画に関する研究は概して文献的裏付けを中心にすえ,絵画そのものについての研究では,全体の構図,とりわけ遠近法の問題やブルネレスキとの関係,そして「古代の復活」という概念と結びつけられ記述される嫌いがあった。中でも,ベックやモロー氏らの史料分析やパロンキ氏の遠近法の研究は優れたものと言えよう。図像学的研究では,若山映子氏の研究がある。一方,制作年代や壁画の作者帰属の問題に関する議論では,修復以前から議論が紛糾し,修復後の報告によって全て解決されるかに見えたか,大いに議論の余地を残すものとなった。日本国内の研究では,その紛糾した議論をまとめることに努力が払われてきた。修復後,しだいに修復後のデータの冷静な分析が行なわれるようになり,K.クリスチャン氏や若山映子氏が研究を発表している。私としては,様々に紛糾した議論の打開と,幾分かこれまでの議論より実証的方法を目指す為に,描法の分析を行いたいと考えた。マザッチォ,マゾリーノ両者共,ジオッテスキの伝統の中にあったc.チェンニーニの『絵画術の書』(Librodell'arte)に記述されている描法とは異なる描法を用いていることから,ジオッテスキとは別の流れから絵を学んだことも想定される。程を究明するためにも,描法分析による実証的研究は不可欠であると思われる。⑮松本竣介研究ー1912■1948-研究者:平塚市美術館主任学芸員小松崎拓男明治以降を対象領域とした日本の近代美術の研究は,近年,作家個人に関する詳細な調査研究の成果が蓄積されるに従い,各分野を総合的な視点で捉えながら,西欧美術の移入,影響関係という側面によって見られがちであった評価を再考し,その独自95
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