⑯ 有志八幡講十八箇院所蔵五大力菩薩像の研究研究者:東京国立博物館資料部情報調査研究室研究員安嶋紀昭本調査研究の目的は,有志八幡講十八箇院所蔵五大力菩薩像三幅の制作年代を明らかとし,その絵画史上における意義付けを行なうことにある。ここで本図の制作年代に関するこれまでの見解を辿れば,田中豊蔵氏が三幅を同時作としながら無畏十力吼のみを弟子筋による別筆と考えたことをはじめ,同時説においても制作年代は十世紀前半,十世紀末〜十一世紀初,十一世紀の三説があり,異時説では金隋吼を十世紀中頃•他を十一世紀後半,金剛吼を十世紀•他を十二世紀とする二説に分かれる。諸説が生まれた原因は,考察の根拠を,主に筆法や花文・火烙の表現などを肉眼で観察した結果のみに頼っていることにある。本図の研究を進展させるためには,画面の実証的調査研究が必要であり,これまでに本図に対して試みられることがなかった光学的方法を適宜応用し,肉眼では探知できない客観的資料による様式技法の比較検討を行って,本図の特色を明らかにする必要がある。⑰ 仏教版本挿絵の系統的研究研究者:神奈川県立金沢文庫学芸員中野雅之仏教版本の挿絵は,美術史,国文学あるいは書誌学等,関連する諸分野においても,従来注目されることが少なく,体系的な研究が少ないように思われる。仏教版本の挿絵は,教義や信仰の内容を民衆により理解しやすくするために用いられるわけであり,その詳細を研究することによって,近年特に研究の進んでいる「絵解き」との関係や,また,説話等の版本挿絵を調査することによって,近世における説話の受容や唱導文学との関係を解明することができると考える。⑱ カルカー,ニコライ聖堂内の木彫研究研究者:国立西洋美術館学芸課研究員田辺幹之助ニコライ聖堂内装は,ドイツ末期ゴシック彫刻の頂点のひとつ,ヘンリク・ドウヴ-104-
元のページ ../index.html#134