鹿島美術研究 年報第10号
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② 「80-90年代の日本における現代美術の潮流」,「日本におけるビデオアートの発表」"A Study of Recent Trends in Japanese Art" "Presentation of Video Art in Japan" 招致研究者:ニューヨーク近代美術館学芸員報告者:原美術館館長バーバラ・ロンドン女子はニューヨーク近代美術館のビデオ・キュレーターとして18年間以上にわたり,現代美術とテクノロジーを用いた美術を専門に研究してきた。1965年頃から現在までに創作されたアート・プロジェクトを把握しつつ,新しいハードウェアと新人の創造力の両方を継続的に探求している。それは参考資料(新聞や雑誌の記事,プレスリリース,プローシェ,カタログ等)からの情報収集も含むが,ロンドン女史はその情報の大部分をアーチストや他のキュレーター,ライター,ェンジニアなどから直接得ている。この研究の成果はニューヨーク近代美術館で常時行われているビデオ・プログラムにおいて今後随時発表されるものと思われる。ロンドン女史は今回のわが国での研修中,「30歳未満の世代におこった重大な影響とは何だったのか」という点に興味を持ち,特に若手作家の製作活動を探求した。彼女は,マスメディア,西洋美術,そして伝統的な日本文化が若い芸術家の考え方や制作方法にどんな影聾を及ぼしているのかを理解しようとした。以下はロンドン女史の研修レポートの一部である。「滞在中は関東,関西および各地合わせて150人以上の芸術家に会いましたが,地域ごとの制作上の違いには興味をそそられました。どうやら首都では,東京の多くの芸術家が国際的な流行,また権力と,雑誌が流行としているものに心を奪われているようです。これら芸術家はバプル経済に最も影響されたので,一般的にいって制作の大部分が様式や技巧に従事しているように思われます。一方,関西の芸術家は,莫大な文化の歴史とパワフルなキッチュに囲まれており,より独立した視点をはっきりと持ち,現代に存在するものの中心とは何を追求しているように私には見受けられました。大阪ではより皮肉やユーモアが感じられ,これら芸術家の制作に対してよりリラックスした姿勢でいるように思われました。今日の日本の芸術家たちはいかにして有意義な自己表現ができるか奮闘しています。原バーバラJ. ロンドン(Barbara J. London) 俊夫-26 -

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