鹿島美術研究 年報第10号
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という決して容易ならざる条件が課せられている。そのための問題はプロジェクト発足時点でもやや懸念されたが,実際こうして1年半以上進行してみて,やはり明確化してきたと言うべきであろう。しかし,この問題は決してプロジェクトの進行にとって障害とはならない。なぜなら,それは本プロジェクトによって蓄積される情報の量や内容が予想以上に豊富になったための問題である。だから,技術的にどう対応するかを考えればよいだけである。この場合,現時点で東洋部に寄贈されたソフトウェアのみで,すべての作業をオートマティカルにこなしていくことは事実上不可能である。そのため,前述したような複線的に対処するという方法をとる道を選択した。このことによって,直ちにすべてが統合化されデータベースは得られないものの,結果的にはすべて有効に利用し得るデータのファイルを作り上げることは可能になったし,日本語英語双方の記述方法や分量の問題にも対処できる。このようにして,具体的なデータ入力及び蓄積については第1期期間中は問題が生じないようにしたつもりである。加えて,本プロジェクトの最終目的のひとつである,ボストン美術館所蔵全美術品データベースヘ日本美術品データベースを読み上げての統合,という課題について検討した。これについては,ボストン美術館楽器部学芸員タを美術館のコンピュータシステムで実際に読み上げることに成功した。これは一見簡単なように見えて,実は難しい障害がいくつも存在する。その過程で鹿島建設仰情報システム部の熊谷副主査にも助力をいただいたが,幸いにして英語入力分の仏教絵画データベースが美術館のデータベースに確かにリンクさせることができた。そして,報告者とQuickly氏の検討で両社のデータベースを比較的容易に移行させ得ることを確認した。これは,本プロジェクトの最終的な見通しを明るいものにしただけでなく,美術館側の強い関心に直ちに答えることができた点でも重要な成果であった。新たな運用システムの構築は,8月から始まった奈良国立博物館の関根俊一氏による仏教工芸品データベースおよび,東京芸術大学の水野敬三郎教授による仏教彫刻データベースそれぞれの入力やフォーマットの構築のために行った。結果として,それぞれの方の要望と東洋部のアン・モース女史の希望とをあわせて勘酌し,本年度中に調査が終了する仏教美術関係データすべてを統括するシステムを完成させた。これは,のSamQuickly氏と数度の試行を重ね,日本のNEC製ソフトウェアで作成したデー-31 -

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