鹿島美術研究 年報第10号
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ジャンルごとにデータベース構造が異なるものの,全体でリンクしあえるようなデータベースにし,なおかつ入力者の利便を考えて,できるだけ共通性の高い入力方法をとることにした。以上のような新しいシステムはごく簡素なものではあるが,トラプルが少なくすぐ使える形を第一義とした。なおこうした方針は,報告者が美術館の前述のQuickly氏や,来年度この方面の助言者となる東京国立文化財研究所の島尾氏とも相談の上でたてたものである。最後に,東洋部での本システムを実際に用いて,日本から派遣された研究者が残していく作品調書を,データベースに入力する作業を直接担当する方への指導が報告者の課題であった。まず,統括して入力するのはアン・モース女史自身で,英語の部分は彼女自身が担当する。しかし,彼女は東洋部の副部長でもあり多忙をきわめ,日本語部分の入力までの余裕がない。そのため,前回報告者が助言したように,日本語に習熟し,なおかつ美術史についても一定以上の知識を有する協力者を得て,その方に日本語部分の入力を依頼するべきである。日本へ入力を外注することは費用の面からみてあり得ないから,ボストン現地における半ばボランティア的な協力を期待するほかはない。しかし,マサチューセッツ大学アマースト校で,アン・モース女史の夫君サム・モース氏が日本美術史の教鞭をとっておられ,幸いにして彼の大学院生で日本人の西村女史が上記作業の協力者になってくれた。彼女は,こうした作業にもきわめて有能で,効率よくデータの入力を行ってくれている。また,実際の調査にも立ち会い,研究者が用いる専門的用語や記述方法にも通じ,願ってもない入力協力者である。ただ,彼女はコンピューターシステムそれ自体に明るいわけではなかったから,ごく基本的な知識を教授し,実際の運用システムも彼女とモース女史の使用を第一に考えて設計した。また,西村女史の利便を考えて,入力作業がボストンを離れたアマーストでも行えるように(同校にはNEC製の旧型のパソコンがある),同校の機器やソフトをセットアップするため,報告者は往復6時間の道を2回赴き,その作業を行った。以上の作業には,ウィークデーだけでなく休日も返上して延べ20日ほどを要した。そのほかに,泉氏が調査しなかった仏教経巻の調査を報告者は担当し,その分の調書32 -

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