鹿島美術研究 年報第10号
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②第2回国際文化財生物劣化会議(2NDINTERNATIONAL CONFERENCE ON BIODETERIORATION OF CULTURAL PROPERTY) 申請者:第2回国際文化財生物劣化会議組織委員会委員長報告者:東京国立文化財研究所保存科学部長(本組織委員会事務局長)新井英夫1.はじめに第2回国際文化財生物劣化会議(2ndInternational Conference on Biodeteriora-フィコ横浜・会議センターで開催された。本会議では,20か国から41編(アジア12,欧米18,日本11)の一般講演と6か国から20編(アジア3'欧米5'日本12)のポスター展示による研究発表が行われた。マラダサ氏の紙と木製品,バングラデシュのS.A.M.M.ヤーハン氏によるタケやひょうたん製民族資料の虫菌害の報告の後,イタリアのC.ジャコビーニ氏が,フレスコ画がピンク色に変色する現象の研究を報告した。すなわち,10数年にわたってねばり強い研究を継続して,遂に従来知られていない好乾性藻類に起因する劣化現象であることを解明した研究であった。我々は,文化財に発生する未知の劣化現象に出会うことが多いが,同氏の研究態度は我々がもって範とするべきであろう。の有効期間の判別法を報告し,イランのA.ヴァタンドウスト氏が,イランにおける史的建造物とその保存について報告した。構造と構成々分からの岩石学的研究を報告し,フランスのG.オリアル氏は,ある種の細菌を劣化した石灰岩の表面に繁殖させて,その石灰岩を再生させるという新しい観点からの報告であった。従来の合成樹脂等による報告ではなく,きわめて独創的で今後の発展が期待された。tion of Cultural Property,略称ICBCP-2)が,平成4年10月5日から8日までパシ2.一般講演の概要(1) 総説:タイのC.アラナニャク氏による各種文化財,スリランカのS.N.ウイ(2) 建造物:ノルウェーのJ.マットソン氏が,外界の影靱を受ける木造古建築材(3) 石造物:米国のJ.トウィリィ氏が,地衣類と岩石の界面に発生する現象を,(4) 木製品:英国のA.M.ジョーンズ氏によるチューダ王朝の木造軍艦マリーロ47 -石健三

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