空気殺菌装置ステリレールを21.21m勺こ1台の割合で設置したときの微生物数の変動を計測し,最も減少したときは,88%のカビが殺菌され,本装置が書庫の微生物を確実に減少させることを示した。ロシアのJ.P.ペトシュコーワ氏は,13世紀のギリシャ本羊皮紙が,微生物によって著しく汚染されており,その劣化部位から細菌を分離し,これらが蛋白分解能を示すことを報告した。また,羊皮紙上の白っぽい膜に鉛白の存在を認めた。そして,加害微生物の防除に界面活性剤の応用等を検討して報告した。ビを分離し,最も出現頻度の高いカビを供試して顔料や接着剤の選択性を検討した。防徽剤についても比較検討し,処理後1■ 2年有効な防徽剤,酷酸フェニル水銀やプリベントールR90,でも2年後にはその効力を失うと報告した。オーストリアのK.ペターセン氏は,ザルツブルグのノンベルグ修道院のロマネスク壁画が,硝酸塩や塩化物の析出によって塗膜層が著しい劣化をこうむった現象があり,この塩類の析出を止めるために湿度を上げると,放線菌が壁画面に灰色の層を形成するまでに繁殖した。放線菌をチモールで処理すると,チモールに耐性のカビが増殖し,これが壁画の劣化を進行させていた。従って,この壁画の被害は,カビ類の加害と長期にわたる不適当な殺菌剤の使用に原因があると報告した。の関連を15年以上研究してきた米国のC.E.ケイン氏が,鉄または銅によるフォクシングは,4種類の分析結果から紙の化学的劣化が進行した結果とし,フォクシングが出現する割合は,紙の性質,相対湿度,pH,気体の存在など環境因子に影聾されるとした。英国のV.ダニエル氏は,こ、数年間の研究から,酸化漂白で無機と有機因子のフォクシングとを区別する近紫外光での蛍光は,有機因子のフォクシングは暗く発現する。紙の鉄粒子は化学的テストで検出できる,X線写真で観察される密な小粒子の多くは非鉄粒子であり,塩素が鉄によるフォクシング部位に存在している等の実験結果を報告した。書籍の保存について長年研究しているイタリアのF.ガロ氏は,プレプリントのみの参加であった。森県氏らは,書庫で発生する各種のフォクシングと材質及び保存条件の関連を考察し,風の流通が阻げられるところに発生するとした。新井英夫は,カビ起因のフォクシングを18年間研究し,フォクシングがカビの代謝生成する有機酸とアミノ酸及び紙のセルロースに由来するセロオリゴ糖との間のメイラード反応で生成す(8) 絵画:インドのS.ダーワン氏らが,アジャンタ壁画の劣化部位から各種のカ(9) フォクシング:絵画や書籍等に発生するフォクシングと鉄・銅などの金属と-49-
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