鹿島美術研究 年報第10号
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3.ポスター展示の概要告した。これらは,酸化エチレンが使えなくなってきたための研究であるが,長時間処理が必要であり,しかも加害微生物の殺菌はできない。山崎真司氏ら及び木村宏氏らが,酸化エチレンより安全性の高い殺菌性燻蒸剤として酸化プロピレン及び酸化プロピレンと臭化メチル混合剤の殺虫・殺菌効果と材質への影響を検討した報告を提出した。その他に,中国の解玉林氏が臭化メチルの殺菌効果を,米国のN.Y.スウ氏が,殺虫性燻蒸剤弗化サルフリルの殺虫効果を報告した。これらは,酸化エチレンが使えなくなって,各国が文化財の加害生物防除方法を模索している姿を如実に示していた。サンシバンムシを誘引する性フェロモン,食物性誘引剤,照明を組合せて実験した結果,この3種類を組合せたものが,個別に1種類を供試した場合よりも多くのムシを誘引した。また,青色光を発光するフェロレイは,タバコシバンムシやジンサンシバンムシの捕獲に有効であると報告した。また,インドのK.C.D.ウルス氏は,ワモンゴキプリの制御に雌の性フェロモンを用いるときは,4月〜7月に実施すると有効であることを報告した。ルーマニアのA.ポペスク氏は,ルーマニアで文化財へのカビの生育制御にジアルキルジチオカーバメイトとヘキサハイドロトリアルキルトリアジン等の混合剤の効果を検討した結果を述べた。森田恒之氏らは,低毒性のシフェノトリン液化炭酸ガスに溶解して,霧状に絨毯等に吹き付けるとイガの防除に有効であると報告した。これら低毒性防虫剤の研究は,継続的に実施しなければならないが,文化財の防菌防虫は,常にそれら薬剤の材質への影響を配慮した利用法を考えなければならない。け木材等について,国立保存修復博物館学センターでの生物劣化研究の成果を報告した。キューバは熱帯性気候区に属し,微生物による劣化と防除法の研究が進められている。ハチの巣から採集されるプロポリスのアルコール溶液が,防菌効果を示すことを報告した。現象の調査研究を報告した。すなわち,漆喰壁の黒変は,クラドスポリウム菌に起因することを究明した後,その防除対策として撥水剤と防徽剤を組合せて処理したとき(12) 防除法(iii)薬剤・天然物・機器:河野昌弘氏らは,タバコシバンムシとジン(1) 総説:キューバのA.セペロ氏が,同国の文書,壁画,石造物,木製品,水潰(2)建造物:大和智,坪田義和氏らが,国宝姫路城等の漆喰壁に発生する黒変-51 -

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