の効果を実験室的に検討した。次いで,姫路城の漆喰壁で実地試験を試み,18か月後の所見では,撥水剤(無機系とシラン系)と防徽剤ノプコサイドを組合せた処理区で防徽効果が顕著に認められた。土居修一氏は,重要文化財北海道大学牧牛舎に発生した木材腐朽菌ナミダタケによる甚大な被害と修復について報告した。すなわち,被害の実態ナミダタケの生態特に温湿度と生育の関係を明らかにし,防除法の要点を述べた。類と蘇苔類のクリーニングと強化処理について報告した。すなわち,輝石安山岩の石仏・石塔に対して生物除去剤2種類と撥水または強化剤3種類の効果を比較検討した。西浦忠輝•海老沢氏らは,石英砂岩に銘文が刻まれた自然石に地衣類が着生し,約200年の間に銘文の判読が困難となった石造物について,ホルマリン等による殺菌,ワイヤーブラシ等による地衣類のクリーニング,シリコーン樹脂による撥水処理を実施し,処理後4年を経過した現在,良好な状況にある。(4) 木製品:井上嘉幸氏が,1700年間埋蔵されていたトチノキ材の化学組成を報告した。すなわち,炭水化物の97%,リグニンの30■40%が流出していた。出土木材の80%はリグニンで,縮合構造に富むリンギル核を多く含む部分が残り,炭水化物はガラクタンが比較的安定であった。流出した成分は,リグニンでは非縮合構造の部分と多糖類と推定した。(5) 虫害と研究法:英国のD.B.ピニンガー氏が,博物館等の民族資料や自然史博物館資料を加害するヒメマルカツオブシムシをフェロモンや食物誘引剤を利用した害虫捕獲器で効果的に加害虫を減少させることが可能であり,収蔵・展示品の管理に有効な方法とした。篠田一孝氏らは,タバコシバンムシやカツオブシムシ類の野外における生息の実態を,フェロモントラップ法や直接採集法で調査した。その結果,鳥の巣にタバコシバンムシやカツオプシムシが認めれ,野外に設置したフェロモントラップでカツオプシムシの捕獲が可能と報告した。山野勝次氏は,長崎の重要文化財崇福寺のイエシロアリ被害の実態,イエシロアリの侵入経路,原因を明らかにし,その防除対策を報告した。英国のV.ブリス氏は,ビクトリア&アルバート博物館で発生したヒメマルカツオブシムシによる染織品の被害について,博物館が実施した捕獲・監視プログラムを報告した。そして,敷地全体に対する実際的で効果的な害虫防除対策の必要性を述べた。(3) 石造物:車塚哲久氏が,重要文化財元箱根石仏・石塔群に着生している地衣-52 -
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