鹿島美術研究 年報第10号
77/142

4. ICBCP-2の評価第2回国際文化財生物劣化会議組織委員会は,本会議を日本で開催するにあたり,ると推定し,ケナガコナダニ2種類とネダニについて検討し,抗カビ性の存在を認めた。が,このパステルカラーは,カビによって著しく劣化されるので,その防除法を検討した。小谷野匡子氏は,カビの被害を受けた日本画20点について調査研究し,主として6種類のカビによって劣化されると述べた。年開発されている種々の機器の性質と有効性を示した。すなわち,小形の温湿度記録装置データーロガ,色彩色差計,非接触水分計,三次元測定システム,空気浄化装置等である。博物館で水潰けの状態で展示すると,水槽中にクレプソルミジウム属等の藻類が繁茂する。これを効果的に防止するために,藻類の光合成を阻害する方法等を検討した。その結果,光合成阻害剤は,藻類の繁殖は防止するが,細菌の増殖をうながした。むしろ,含窒素系有機薬剤ホクサイドR-150の0.5%が有効であった。オーストリアのK.ペターセン氏らは,殺菌剤の安全性や材質への影聾を考えると,文化財の加害微生物は,毒性の少ない方法を採用すべきである。例えば,壁画には石灰水や水酸化ナトリウムで微生物の活動を低下できる。紫外線や酸欠燻蒸も効果がある。この研究プロジェクトは,修復者,毒物学者,科学者が参加して,総合的に実施したとき各種の討議が可能となる。杉山真紀子氏らは,殺虫剤ジクロルボス(DDVP)が,断面梢に比例し距離に反比例して拡散するとした。ブラジルのS.M.オッタチ氏らは,18.45m3の密閉空間に空気殺菌装置ステリレールを2台設置して殺歯効果を検討した。その結果,ステリレールを作動させると最高92.96%の菌数の減少が記録され,ステリレールの有効性を示した。インドのP.K.バジパイ氏らは,地衣類への防除薬剤の効果を起微量の光子放射を計測して生理活動を評価する方法で,各種薬剤の防除効果を比較検討した。今世界で文化財のどんな生物劣化の問題に関心が寄せられているか,最も緊急を要す(6) 書籍:滝沢孝ー氏らは,古糊の熟成及びその抗菌性は,コナダニと関係があ(7) 絵画:s.ダーワン氏らは,インドでは絵画の修復にパステルカラーを用いる(8) 防除法(i)環境制御:内山満氏は,文化財の保存状態を把握するために,近(9) 防除法(ii)薬剤・天然物・機器:伊藤実,福原孝一氏らは,出土した漆器を-53

元のページ  ../index.html#77

このブックを見る