鹿島美術研究 年報第10号
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る問題は何かについて熟考した。そして,絵画・書籍等に発生するフォクシング(褐色斑点)は,古くから知られている劣化現象であるが,未だ原因と対策が確立していない分野であるので,これを1つのセッションで取り上げた。今世界の各国で最も緊急を要する問題は,文化財の加害生物をどのようにして殺滅し,その被害を食い止めるかにあると組織委員会は判断した。すなわち,従来広く用いられてきた燻蒸剤酸化エチレンの作業環境の許容規準が1ppm以下と規制され,事実上使用できなくなった。従って,酸化エチレンに代る燻蒸剤の選択及び処理方法の確立が焦眉の急となっている。そこで,ICBCP-2組織委員会は,加害生物防除法として,燻蒸法,環境制御法及び天然薬剤,機器等に重点を置いたプログラムを作成し,日本でのICBCP-2を特徴づけたのである。大変興味ある企画であったと国外の参加者から評価された。これは,ICBCP-2組織委員会が,プログラム編成時に意図した点を評価されたことになり,主催者として面目を施した次第であった。また,日本での和紙による保存修復の国際研修の準備のために来日していたローマの国際文化財保存修復研究センター(ICCROM)のG.クリス氏に会ったICBCP-2の国外からの参加者が会議の成功を伝えており,同氏から祝福を受けた。日本からの参加者も,国外研究者との交流を活発に展開し,互に有益な情報交換が行われた。面の絶大なご支援を得られたからで,深甚の謝意を表する次第である。ICBCP-2の閉会後,防除法特に環境制御と燻蒸法及びフォクシングのセッションは,5.おわりに第2国際文化財生物劣化会議を成功裏に終えられたのは,鹿島美術財団はじめ各方-54 -

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