鹿島美術研究 年報第10号
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1700年の台帳の記載から考えれば,馬車で玄関口に乗りつけた後,階段を通って主階(Galerla de! Rey)と呼ばれる大きな居室などであった。また一階にもいくつか部屋ョが描いたような外観(図1)ができ上がる。しかし,現在はこの建物は現存せず,プランも残されておらず,建物の構成や部屋の配置は先の油絵と,1700年のカルロス二世の死後に作成された遺産美術品台帳の記載を頼りに復元するしか方法はない。絵から推測されるように,中央に十六世紀の塔を留め,その周囲を正方形のプランで二階建の建物が囲み,各側面に開口部を五つ設け,主(二)階の窓はかなり大きい。に上がると,部屋が九室と国王のための小礼拝拡があったらしい。その内訳はアルパースの研究(4)では,国王の寝室,客間,女王のために二室,そして“王のギャラリー”があり,そこにも絵は飾られていた。絵画装飾の内容を同台帳を通して確認しておこう。総数一七三点で,ルーベンスおよび同派による六三点の神話画と五0点の狩猟,動物画,カルドゥチョによる二六点の宗教画,スペイン各地の離宮の風景一七点などで,ベラスケスの絵としては,第一図1トーレ・デ・ラ・パラーダ外観17世紀,油彩,マドリード市立美術館-66 -

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