(1) 外国人研究者招致2.平成4年度援助① ギリシア,エトルリア,ローマ建築招致研究者:ニーメヘン・カトリック大学古典考古学科教授報告者:東京大学文学部助手羽田康一ギリシア・ローマ建築の,とくにオーダーの寸法と比例に関する世界的権威であるヴァレ教授は,東京大学,イタリア文化会館,熊本大学において数次にわたる講演を行なっただけでなく,同分野に関心を持つ研究者との意見交換を行い,上記2大学の大学院生の研究指導を行なった。その詳細は以下の通りである。<講演〉東京大学で行なった講演は「古典期の神殿」と題し,紀元前5世紀のギリシア神殿を中心にその完成度を,詳細な数字をあげて証明した。それと同時に,古典期の神殿がいかにアルカイック期の神殿と異なり,ヘレニズム期の神殿にいかに継承されていったかを具体的に解説した。また美術史との関連から,古典期神殿の形成に彫刻,絵画が果たした影響にも言及した。熊本大学で行なった講演は,工学部建築学科の建築史を専攻する大学院生を対象に行なわれたので,上記講演のとくに寸法と比例,およびそれから類推される設計法に焦点をしぼって行なわれた。イタリア文化会館の講演は,ポンペイの神殿,公共建築,住宅におけるイタリア的特質とギリシア的特質の分析に関してである。地方都市であるポンペイは,時代によってさまざまな中心地からの影響を受容しており,その結果,複雑な様相を呈しているが,様式や形式という漠然とした根拠ではなく,寸法と比例関係という客観的なデータを中心に分析を進めているので説得力にあふれた内容であった。いずれの講演も,しっかりと準備されたスライドを中心に話が進められたので,参加者も十分に理解でき,ギリシア・ローマ建築に対する関心を高めた。く研究会〉東京大学で行なわれた研究会は,研究現状の情報交換,建築と彫刻・絵画の影響関係,それにイタリア的なる特質とギリシア・ヘレニズム的特質の相違に関-27 Jos de Waele (ヨス・デ・ヴァレ)
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