2.画家個人の内面性,精神性を個々の作品の表現のなかに探り出そうとするもの。われているとはいいがたい。本研究は,「紙師」という職種の位置づけと「宗二」という人物の役割を,作品と文献の両面を明かにすることで,琳派研究に資することを目的とする。⑫ 雪村を中心とする中・近世東北地方における水墨画の研究研究者:東北大学文学部助手内山かおる従来の雪村研究の方向は,1.雪村の作品の集績とその編年を主とする,美術史研究上,最も基本的なもの。雪村が39歳の時に書いたとされる「説門弟資」や晩年の自画像ともいわれる老僧像とを作家論の要とし,同時代における雪村のきわだった個性にスポットをあてる。上記二項に集約されるものと思う。今,これらに基づき,第三の方法として申請者は,他の画家達との相違点すなわち雪村の個性のみならず,前・同時代作家との多くの共通項をも捜し求めることにより,日本美術史のなかに雪村をバランスよく位置付けることが可能になると考える。八十有余年にわたる生涯で,活躍の地を転々とした雪村の画業はいわゆる“地域性”にしばられたものではない。今,絵画美術の分野にも東北文化という一つのピラミッドを仮定してみた時,その頂点に立つ画家は雪村ではない,という逆説さえ成り立つことが予測される。それでは,雪村と同時代の狩野元信(晩年),永徳らが属するピラミッドの一員とみてさしつかえないのであろうか。一方,『古画備考』等にその落款•印章が留められる雪村系画人の存在は,南東北・北関東に雪村派が確かに存在していたことを裏がきしている。また,そのエリアはいわゆる関東画壇とある部分で接触していたであろう。このように,雪村画の理解のためには,多様な視点が要求されている。本研究は上記のような広汎な問いに答えるための新たな基礎調査の一つであり,雪村以外の画家のより多くの作品データを集めることを第一の目的とする。_ 45
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