申請者は,かねてより邪鬼の造形に興味を持ち,研究を進めてきたが,現在図録等から入手し得る邪鬼の図版は限られており,実地調査による写真資料の作製を行う必要がある。また,四天王の従属物として扱われることの多い邪鬼に焦点をあて,体系的に分類・整理することは,仏教図像の観点からは,邪鬼のみに留まらず,夜叉.羅刹といった鬼形像の造形にも関連する問題であり,仏教図像の観点以外からも,畏怖・嫌悪のイメージの具現化という点で研究する意義のある問題であると思われる。⑳ ウルビーノにおけるピエロ・デッラ・フランチェスカの活動について研究者:共立女子大学文芸学部専任講師池上公第一の目的は,『ブレラ祭壇画』の成立について,他の画家からの影響があったかどうか,あったとするならばそれはどこに由来するものか,ミラード・ミースら一部の研究者が指摘するネーデルラントの絵画なのか,それともイタリアのものなのか,という点を究明することにある。この点を問題とする理由は以下のようなものである。『ブレラ祭壇画』は15世紀後半のヴェネツィアにおける祭壇画の発展に影聾を及ぼしたとしばしば言われているが,同祭檀画が制作されたと推定される時期,1470年頃,北イタリア各地で同様な構図をもつ祭壇画が相前後して制作されている。これらの作品群とピエロの作品との関係はほとんど論じられていないと言ってよい。この関係を明らかにしなければ,ピエロのヴェネツィアヘの影響を論じることには無理がある。したがって本研究の結果如何によっては,ウルヴィーノ及びヴェネツィア,バドヴァ,フェッラーラ等における絵画活動の展開についても見直しが必要となるであろう。またウルビーノ宮廷においてピエロが受けた影椰についても,研究を前進させることができるであろう。最終的には,この点が目標となる。⑪ スペインにおけるシュルレアリスム研究者:東京造形大学助教授岡村多佳夫申請者は,スペインのシュルレアリスムについて,以前にピカソ,ミロ,ダリなどについて語ってきたなかで触れてきた。しかしながら,それは十分とはいえない。彼らは,バルセロナやカタルーニャ地方で育ち,パリで活躍するが,彼らの表現を見る58 -
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