つ。romantische Ironie)の問題については,ダダの理解なしに把握するのは困難であろまた,この数年ハートフィールドのフォト・モンタージュやシュヴィタースのメルツ芸術が再評価されているのは,ダダのきわめて現代的な芸術観にある。ボイスやキーファーの作品は,芸術手段を含めて,様々な観点からダダに恩恵を受けているが,作品の根底にあるドイツ・ロマン主義の影響とくにキーファーにおけるアイロニー(dieナチスの退廃芸術展により排除された,ドイツ・モダニズム絵画の発展を,戦後芸術の観点から考察する新しい研究分野を開拓したいと考えている。⑲ 木版雲母刷料紙装飾について研究者:大和文華館学芸部員中部義隆木版雲母刷料紙は版下図様の作者が宗達様式を示すだけではなく,尾形光琳,乾山兄弟をはじめ琳派を自認した絵師達に大きな影響を与えている。後に及ぼした影響力の大きさから考えれば,琳派芸術の源泉といっても過言ではない。しかし,木版作品という性質上かなり長期間にわたって制作されたことや,高い評価を受けてきたがゆえに,度々復刻あるいは模刻されたため,復興当時の図様をはじめ不明瞭な点が多い。微妙に異なる図様や左右の反転する図様が見出せるのは,こういった木版作品特有の複雑な制作背景を示している。木版雲母刷料紙の図様には新版が追加され,版木の活用法もしだいに変化していったものと予想されるが,現状では,復興当時の図様さえ,十分には把握されていない。宗達様式の展開および後の琳派に属する画人の様式を考察する上で,重要な位置を占める作品群であるにもかかわらず,調査研究がおよんでいないのが構想理由である。⑩ 結婚の図像学ー初期ネーデルラント絵画における一研究者:大阪外国語大学,近畿大学,京都造形大学,金蘭女子短期大学「意義」結婚の図像については従来,個別の作品についての独立した研究が多く見られる一方で,結婚の儀式の図像研究(例えばJ.-B. Molin : Le Rituel du Mariage 非常勤講師蛾川順子-64-
元のページ ../index.html#92