Lorenzo Ghiberti, Princeton 1956)はその極みを形成し,その後の研究に刺激を与Haven and London 1983 ; Bober & Rubinstein, ~ue る信実であるが,その父藤原隆信と異なり,伝称作品も含めてその画風をうかがい知ることの出来る具体的な作品が,美術史的な様式分析を行うのに十分な程残されているにもかかわらず,各個別の作品研究は成されているものの,藤原信実という個人の画業全体の中での作品の総合的な把握は未だ十分には成されていない。この信実の画風展開を把握し,鎌倉時代肖像画史の展開への手がかりを得ることが本調査研究の第ーの目的である。その際,信実が主に依っているやまと絵の伝統とは別に,鎌倉時代には宋より輸入された頂相を中心とする宋代肖像画の一系列が画檀に大きな影需力を持っていたと考えられるが,信実も頂相を描いていたことが文献から知られ,信実個人の画風の中に反映したやまと絵的な伝統と宋代肖像画の手法の緊張関係を分析することで,鎌倉時代における宋画受容の具体相の把握へと展開させる基礎を得ることをもう一つの目的とする。さらに,信実及びその周辺の作品には白描の技法によるものが多いが,それらの作品は鎌倉時代後期に隆盛する白描やまと絵の前史的な位置にあると見ることもでき,鎌倉時代およびその前後の時代をも含めた日本の白描画の歴史の分析へと敷術することも試みたい。以上のように,藤原信実の画風を分析することで,肖像画を中心に鎌倉時代絵画史の諸局面の理解への展開を図ることが可能であり,それが,今回調査研究を試みる理由である。④ ルネサンス期ヴェネト州の古代品収集趣味の研究研究者:東京大学大学院人文科学研究科博士課程ルネサンス美術と古代彫刻の関係は,ルネサンス,すなわち「古代復興期」美術研究の中心の1つと言ってもよく,ヴァールブルク以来の伝統のあるこの研究分野は,幾多の優れた研究を生み出した。クラウトハイマーの名著(RichardKrautheimer, えた。80年代には,ハスケルとペニー,ボーバーとルービンシュタインの2組の研究者が著したハンドブックが出現する(Haskel&Penny,~, New した傾向にあり,ヴェネツィアにおける古代趣味の総括的研究は,ファヴァレットの~'London 1986)。しかしながらこの2冊はフィレンツェ,ローマを中心とイタリアピサ高等師範学校大学院石井元-39
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