鹿島美術研究 年報第12号
66/116

venete al tern~, Roma 1990)を待たねばならない。このパドヴVendramin in Venice b~, Yale Univ. 1971)やピンカス(Debo-rah Pincus, "Tullio Lombardo as a restorer of Antiquities," in Arte Veneta 33 (1979) pp.29-42)の研究が存在するが,古代趣味の全貌はつかみづらい。最近の著作(IreneFavaretto, ~uaria nelle collezioni ァ大学教授は,野心的にも14世紀から19世紀までをすべて網羅しようとするが,幾分おおまかに過ぎて,我々の問題を探るには不十分である。一方,個別研究としては,ステッドマン・シアード(WendyStedman Sheard, ~e Andrea そこで本研究の目的は,筆者が現在ピサ高等師範学校大学院で師事するセッティス教授の主張する「連続性」の理論に基づき,時代を15世紀後半から16世紀初頭(ローマの略奪1527年以前),場所をヴェネト州に限り,その古代品収集趣味を,個々のコレクション中の個々の古代彫刻に当たって研究すること,そして,その当時の美術家たちが目にし得た古代彫刻の発見・収集の状態を明らかにすることにある。⑤ 国立歴史民俗博物館蔵洛中洛外図屏風の考察ー先行版本挿絵との関係一研究者:たばこと塩の博物館近世絵画及び工芸において,先行する版本挿絵を粉本として制作されたものは浮世絵を始め,近年の研究で多く報告され,美術史・近世文芸史研究に資している。しかし,そのほとんどが江戸後期のものであり,作例も屏風の様な大画面では,部分的利用しか現状例(報告)がない。今回,屏風という大画面に,なおかつ多くの挿絵が利用され,京都の地誌の挿絵を洛中洛外図に使用するという利用の背景も興味深い。そして,この相互の関係を明らかにすることで版本挿絵を粉本とする絵画(さらに形状として屏風)の好例として位置付けられるものと考えられる。また,本屏風の製作年代も版本挿絵を粉本としたことが明確になれば,版本の刊年を手がかりに考察することができる。これにより,この屏風の存在が,美術史研究及び書誌学の資料として,今後のこの分野の研究に資する事になろう。このように,本研究は,美術史のみならず,書誌学的にも問題点を有し,今後双方の分野の総合的な調査研究の基礎と成るべく,すすめていきたい。崎均史-40 -

元のページ  ../index.html#66

このブックを見る