逆手来迎印を示す諸作例を個々について研究することを通じ,上記諸問題を解明するための一助としたい。究極的には,日本文化史における外来文化受容という汎時代的なテーマにつながるものと思われ,その研究の意義と価値はけっして低くないと自負する次第である。⑩ 在銘懸仏における尊像の図像的研究研究者:島根県立博物館主任学芸員的野克之まず,今回の調査研究は,詳しい調査の及んでいない在銘(平安〜室町時代)の懸仏を中心に行う。詳しい調査研究の済んでいるものに関してはその報告書等を参考にして1点でも多くの在銘作例の写真および調書を集める。この作業により平安〜室町時代の懸仏を制作年順に並べた懸仏年表ともいうべきものを作製する。懸仏をこの様に詳しく年表形式に並べたものはあまり刊行されておらず,管見ではあるが,今回のように写真を伴うものは見たことがない。その懸仏年表を縦横に駆使することにより,懸仏に用いられる尊像の図像的観察を行い,時代的な変遷すなわち尊像の数,法量の変化,図像の変化を読み取り,時代的な特徴を明らかにしたい。以上のことにより,無銘の懸仏の年代判定にも寄与するものと思われる。また,さらに細かく観察を続けた結果と,同時代の彫刻,絵画,工芸作品における尊像の図像と比較を行い,彫刻,絵画,工芸作品とどこが異なり,どこが共通するのかを解明し,それぞれの作者(あるいはエ房)が懸仏の制作にどの程度関わっていたのかを解明していきたい。以上の作業を通して尊像の図像的考察のみに終わらせず,最終的には懸仏制作の背景にまで踏み込んでいきたい。⑪ 日本近代美術における道化像と三岸好太郎の作品について研究者:北海道立三岸好太郎美術館学芸員苫名直子意義・価値〇ヨーロッパの道化のイメージは日本に広く浸透しているが,その受容の過程につい-44 _
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