の動機•取材先等については未詳の部分が多い。それらを調査し，より広い視野かては，まだ詳細な研究がなされていない。日本近代美術における道化像を調査することは，こうした研究にとって有用な一視点となるものである。〇道化は，魅力的なテーマとして日本近代の画家たちにとりあげられてきた。そうした画家や作品について調査・研究を行なうことは，ひとつの画題という切り口により日本近代美術史を照射する点で，新鮮な視点を提供するものとなろう。その際に，道化はテーマとして様々な意味あいを持ち，形態的にも内容的にも描き手が意識的に採用したものと考えられることから，興味深い側面を明らかにすることが予想される。0道化は三岸好太郎の作品の主要なテーマのひとつとして広く知られているが，制作ら客観的な作品評価を試みることは，三岸の画業研究にとって不可欠である。構想理由道化は，三岸研究にとって重要な課題でありながら，本格的な調査への取組がなされていなかった。これを行なうには三岸単独の調査では不充分であり，より広い視野の設定の必要を感じて，このたびの調査を構想した。調査・研究の成果は，展覧会の企画にも結びつけていきたいと考えている。⑫ 清涼寺釈迦如来像の受容について一平安時代を中心に一研究者：文化庁文化財保護部美術工芸課文部技官奥北宋薙煕二年(985),東大寺僧裔然が台州において製作させ，翌年日本に持ち帰った現京都清涼寺の本塵釈迦如来像は，将来された当初から優填王思慕の栴檀瑞像の模刻としての由緒が喧伝され，以後広く貰賤道俗の信仰を集め続けてきたが，彫刻としての同像がわが国に与えた影響については，鎌倉時代以降その忠実な模像ーいわゆる清涼寺式釈迦像一の製作が盛んに行われたことを除けばあまり積極的な評価を受けていない。たしかに同像はこの時期及びそれ以後，平安時代後期の彫刻作風の展開には何ら関与していないように見える。しかしながら作風や形成の上ばかりでなく，もっと広い意味での影響を考えてみることも必要であろう。釈迦在世時以来の由緒を引＜瑞像としての本像の出現が時の社会とりわけ仏教界に大きな衝撃を与えたことは確実で，それが当時における仏像のありかたに何らかの揺さぶりをかけたというような健夫-45-
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